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 論戦の舞台は衆院から移り、参院予算委員会の審議が29日、開かれた。野党は安倍晋三首相らに対し、「桜を見る会」問題や自衛隊中東派遣、憲法などについての見解をただした。

拡大する写真・図版参院予算委で、立憲民主党の石垣のりこ氏の質問中、資料を見る安倍晋三首相=2020年1月29日午前11時31分、岩下毅撮影

自衛隊中東派遣 国民・森氏「海上警備行動、攻撃あった時できるか」

 国民民主党・森ゆうこ氏 (イラン司令官殺害と報復攻撃について)米国とイランはどちらも自衛権の行使と主張している。首相はどう考えるか。

 首相 我々は当事者ではなく十分な情報を得ていないので、法的な判断を下す立場にはない。

 森氏 無責任だ。自衛隊を(中東海域に)もう派遣している。

 首相 無責任という指摘はあたらない。我が国に来るエネルギーの9割は中東地域からだ。日本関係船舶の安全を確保するのは政府の大きな責任だ。日本もイランと連絡をとり、これ以上のエスカレーションをするべきでないと言っている。ロハニ・イラン大統領も日本の自衛隊派遣について理解してくれた。

 森氏 (自衛隊法上の)海上警備行動は、イラン革命防衛隊から攻撃があった時にできるのか。

 首相 そういう事態になることは想定していない。想定し得ない事態に対しての仮定の質問に答えることは差し控えたい。

 森氏 大事なところなので逃げないでほしい。

 首相 革命防衛隊と結びつけて質問されている中で、仮定の質問に答えることは無用な緊張を生むということも考えてほしい。

 森氏 特別措置法はなぜ考えないのか。

 首相 (中東海域への自衛隊派遣は)現行の防衛省設置法および自衛隊法に基づいて対応可能だ。特措法の制定を含む新たな立法措置は必要ないと考えている。

憲法 社民・福島氏「首相に改憲の権限ない」

 社民党・福島瑞穂氏 首相は憲法改正について、「私自身の手で成し遂げていく考えに揺るぎはない」と記者会見で言っている。首相に憲法を改正する権限はない。国会発議も国民投票も、権限はない。発言は間違っている。

 首相 国会が発議することで最終的には国民投票で決める。会見で質問に答え、自民党総裁か首相かという立場を厳密に区分することなく発言した。党首という立場でも聞かれているわけだから、こういう決意を披瀝(ひれき)させていただいた。

 福島氏 憲法の解釈を間違っている。首相としての発言ではないか。

 首相 会見で、首相としてというより党総裁としての発言を求めたのだろうという観点から言った。リーダーシップをしっかり進めていこうということだ。

 ちなみに、国会の施政方針演説でも憲法改正について言及している。憲法67条の規定に基づき、国会議員の中から指名された内閣総理大臣である私が、憲法に関する事柄を含め、政治上の見解、行政上の事項について説明を行い、国会に対して議論を呼びかけることは、禁じられているものではないというのが、従来の政府の立場だ。

桜を見る会 立憲・蓮舫氏「国民は首相説明に納得しているか」

 立憲民主党・蓮舫氏 国民は首相の説明に納得していると思うか。

 首相 国民の認識について、私が判断すべきものではない。

 蓮舫氏 (会で飲食物を提供し続けてきた会社)「ジェーシー・コムサ」の会長あるいは取締役夫妻を知っているか。

 首相 知っている。

 蓮舫氏 (首相の妻)昭恵氏の紹介か。

 首相 会長というより、役員と相当昔からの友人で、私自身もよく知っている。しかし、一切依頼を受けたことはない、ということをはっきりさせておかなければいけない。

 立憲・石垣のりこ氏 首相は(地元事務所名で会を含む観光ツアーの参加を)「募っているのであって、募集しているのではない」と、頭は痛いけれど頭痛ではないかのような答弁を(28日の衆院予算委の審議の中で)した。普通の人間には理解できないが、首相の中では整合性がとれているのか。

 首相 私だけではなく、例えば自民党では、党の知りうる人たちの中でふさわしいと思われる人たちを推薦している。私の事務所を通じてということになれば、事務所で知りうる限りの人たちについて、様々な貢献をしている人も含めて募っている。

IR・政治とカネ 立憲・杉尾氏、案里氏側への資金「報告なかったのか」

 国民・徳永エリ氏 野党提出の廃止法案を審議し、カジノ事業はやめるべきだ。

 首相 国会で各党各会派が決めることだ。

 社民・福島氏 2017年2月の(米経済人らとの)朝食会で首相がIR推進法成立を紹介した。誰のどんな歓迎コメントがあったか。

 首相 IR関係者から、IR施設は観光立国をめざす日本にとって有益である点、IRに対する社会的懸念など課題解決に貢献したいなどの発言があった。

 福島氏 首相は「(カジノ)基本方針に盛り込むことを検討する」と言ったが、業者との接触について、どんなルールを考えているか。

 赤羽一嘉国土交通相 未定だが、会う場合は複数で議事録を残すとか、透明性を確保することで、自らが決めたルールの中で会う。それが意味のある接触ルールだ。

 福島氏 接触ルールを破っているのが首相だ。

 首相 そもそもルールがない。どの業界を(朝食会から)外してというのは考えられないことで、極めて失礼になる。IRについての要請や要求はその場では全くなかった。

 立憲・杉尾秀哉氏 河井案里参院議員の「政治とカネ」問題。(党本部からの1・5億円の選挙資金提供は)報告もなかったのか。

 首相 全て党の執行部に任せている。

 杉尾氏 否定されない。

 首相 報告は受けていない。

新型肺炎 国民・徳永氏「対応が早かったのか、疑問だ」

 国民・徳永氏 国内で人から人への感染の疑いが確認された。

 加藤勝信厚生労働相 これまでと事象が違っているという認識を持って対応しなければならない。

 徳永氏 対応が早かったのか、はなはだ疑問だ。

 首相 政府の最大の使命は国民の生命を守ることだ。しっかりと拡大防止に全力を尽くす。

 立憲・杉尾氏 政府は対策本部を設置しているのか。

 首相 明日設置する。

 杉尾氏 (邦人帰国の)チャーター機の利用者に8万円請求するそうだが、政府が出していいのではないか。

 茂木敏充外相 これまでも本人に負担してもらっていることもあり、同様の措置をとる。

 自民党・藤井基之氏 世界保健機関(WHO)が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した場合、国内の対応を強化する予定はあるか。

 厚労相 状況をみながら、必要な対応をしっかりとっていきたい。

 藤井氏 ワクチン、治療薬がないと言われる。予防薬、治療薬の研究開発の取り組みが重要だ。

 厚労相 国際協力も含め、開発などにしっかりと取り組んでいく。

(ポイント)「多角形」の民意、受け止めよ 鶴岡正寛記者

 国会審議の舞台が衆院から参院に移った29日、野党議員は安倍晋三首相に、衆院とは違った角度の質問をぶつけた。

 国民は「多角形」で「複雑」だから、「違った角度」で議員を選ぶことの重要性を説いたのは、故・金森徳次郎氏だ。吉田茂内閣で憲法担当の国務相を務めた。日本国憲法によって参院を置く際の答弁で、「多角形」論を主張した。

 その参院は近年、決算重視を掲げる。立憲民主党の蓮舫氏はこの日、桜を見る会に予算を大幅に上回る支出が続いてきたことを取り上げ、「財政民主主義に違反している」と指摘した。決算に重きを置いた質問だったが、首相は「(招待)基準があいまいだったため人数が膨れあがった」などとはぐらかし、衆院での答弁と同じような内容の発言を繰り返した。

 金森答弁から半世紀以上経った今も、民意は「多角形で複雑」だ。安倍内閣の支持率と不支持率は4割前後で拮抗(きっこう)する一方、桜を見る会問題への対応に納得しない人は7割を超える。そうした複雑な民意を受けた様々な疑問に丁寧に答えることこそ、参院審議に臨む首相のあるべき姿ではないか。(鶴岡正寛)

この日の質問者

蓮舫

=立憲

・桜を見る会

・公文書管理

徳永エリ

=国民

・新型肺炎

・防災対策

・IR汚職

石垣のりこ

=立憲

・桜を見る会

杉尾秀哉

=立憲

・新型肺炎

・iPS細胞研究予算

・河井案里参院議員の選挙費用

福島瑞穂

=社民

・カジノ

・憲法改正

・自衛隊中東派遣

森ゆうこ

=国民

・新型肺炎

・北朝鮮拉致問題

・自衛隊中東派遣

・消費増税の影響

藤井基之

=自民

・新型肺炎

・CSF(豚コレラ)

・少子化問題

三宅伸吾

=自民

・新型肺炎

・中国の習近平(シーチンピン)国家主席の国賓訪日

*敬称略