【動画】「イラン 抵抗の三日月」=其山史晃、高野裕介撮影、PMF提供(銃声を含む音声があります)
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高野裕介(ドバイ支局長)

「ソレイマニ、マジ?」

 「これやばい」「ほんとうなら」

 1月3日未明、私がイランのテヘラン支局長とやりとりしたメッセージアプリの内容だ。そして、私たちの不安は、現実のものとなった。

 「恐れていたことが始まろうとしている」

 イラクの首都バグダッドの空港近くで、米軍の爆撃を受けた車両が炎に包まれる映像を見て私は思った。この攻撃は米イランの対立を激化させ、「緊張は今世紀最大レベル」とまで言われた。

拡大する写真・図版イラク首都バグダッドのタハリール広場。昨年10月以降、ここを中心に反政府デモが始まった=2019年8月1日、高野裕介撮影

 米軍が殺害したのは、イランのイスラム革命防衛隊ソレイマニ司令官と親イランの武装組織「人民動員隊」(PMF)のムハンディス副司令官。2人は、中東にまたがる「シーア派の三日月」と呼ばれるイランの影響圏の拡大に深く関わってきた。米国が殺害した理由もそこにある。

 この三日月の存在は、中東での大きな火種になる――。

 そう考えた私たちは、昨夏からPMF、そして様々な親イラン勢力の戦闘員らへの取材を重ねていた。

拡大する写真・図版過激派組織「イスラム国」(IS)との戦闘の痕が残るイラク北部モスルの旧市街=2018年5月6日、高野裕介撮影

 イラクに滞在すれば、PMFの気配を至るところで感じることになる。

 首都バグダッドの静かな住宅街。朝日新聞の支局がある地区は、PMFの事務所がいくつかあり、そのメンバーが簡易な検問所を設けて不審者に目を光らせている。私たちにとっては過激派組織「イスラム国」(IS)の残党や、外国人の誘拐を狙う者が最も恐ろしい。PMFがいるというのは、安全を担保する側面が確かにある。

 一方で、決して気軽に関われるような人たちではなかった。昨夏にイラク北西部で移動中、運転手がPMFの検問所に気づかずに通り過ぎてしまった。正規の検問所ではない、急ごしらえのみすぼらしいものだ。銃を持った男2人に強烈な剣幕で詰め寄られた。同行した警備会社のスタッフらが必死になだめて事なきを得た。

 欧米メディアに拠点を公開したり、インタビューを受けたりすることは極めてまれだ。私たちもこれまで、殺害されたムハンディス副司令官を含むPMF幹部や、それに近い政党幹部に何度も取材を試みてきたが実現したことはなかった。

拡大する写真・図版過激派組織「イスラム国」(IS)との戦闘の痕が残るイラク北部モスルの旧市街=2018年5月6日、高野裕介撮影

 だが、3カ月以上にわたって仲介者を通じて交渉を続けた。警戒する相手に、「私たちは敵意を持って取材しているのではない」と説得し、昨夏、ようやく取材の許可を得ることができた。

 中部ナジャフの拠点に入る際には、普段は冗談ばかり言う支局スタッフたちの表情が違った。スタッフは「すべての人にあいさつをし、礼儀正しくして欲しい」と静かに言った。彼らがここまで緊張する顔は、あまり見たことがなかった。

拡大する写真・図版警備会社のヘルメットを「格好いい」と言って身につけた支局スタッフ=2018年7月10日、イラク北部モスル近郊、高野裕介

 革命防衛隊のソレイマニ司令官…

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