イスラム教の教えに厳格な社会をめざすイランの政治体制の守護神がイスラム革命防衛隊だ。イラン国外に影響圏を拡大する対外工作にも深く関わる。米国が革命防衛隊を警戒し、今年1月にソレイマニ司令官を殺害した理由もここにある。
イランを知るには革命防衛隊に迫るのが一番の近道。イランに赴任する記者は誰もがそう考える。だが、それは極めて困難であることに気がつくのに時間はかからない。不用意に近づけばスパイ容疑で拘束される。私たちのような外国メディアにとっては、「難攻不落」の存在だ。
テヘラン中心部からピルージー(勝利)通りを南東に向けて車を走らせると、約20分で小高い丘が見えてくる。その手前には、初代最高指導者の故ホメイニ師と現最高指導者のハメネイ師の肖像が掲げられた高さ約20メートルの威圧感がある門が待ち構えていた。
革命防衛隊の本部だ。中にはもちろん入ることはできない。携帯電話のカメラで車内から撮影しようとした。すると、同行した朝日新聞テヘラン支局のスタッフに制止された。
「見ろ。無数の監視カメラがある。我々の車のナンバーも記録されている。変なことをしたら拘束されかねない」
よく見ると入り口は厳重に監視カメラが設置されている。イランでは、政府機関など撮影禁止の場所と建物は多いが、革命防衛隊の本部は別格の印象だ。すぐに携帯電話を引っ込めた。
内部がどうなっているのかはもちろん公表されていない。関係者の話だと、内部は広大で、地下施設やトンネルもあるなど、イランが攻撃を受けたときも、最後まで抵抗する前線基地として機能することを想定しているのだという。
革命防衛隊は、1979年に…

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