拡大する写真・図版地元や都心でイベントを開いたり、「地酒バー」を設けたりして各地の地酒をPRする動きも盛ん。写真は昨年、JR東京駅で開催された新潟県の日本酒が試飲できる期間限定のイベント=2019年1月、東京都千代田区

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 いま、飲み屋で当たり前に目にする純米酒。そもそも日本酒は米から造られるのに、なぜ「純米」を名乗る必要があるのか。背景には、戦争の影響に端を発し、混ぜ物に頼ってきた酒造りの歴史がある。そうした酒造りに異を唱え、今に続く日本酒の世界を変えるきっかけになった本があった。

有機で海外に挑む

 醇味(じゅんみ)――すなわちよい酒と出会うと、人はほおを緩める。2年前、スペイン・バルセロナで開かれた日本酒の紹介イベントで、天鷹(てんたか)酒造(栃木県大田原市)の海外・企画担当の志賀守さん(59)は有機米を使った自社の純米大吟醸を味わう客の表情から読み取った。「まろやかな、やさしい味が舌に絡み、その深さを感じている」

 ピークだった1973年の170万キロリットルの3分の1以下に出荷量が落ち込む日本酒。ただ、アルコールや糖類などを加えた「普通酒」とは区別される「特定名称酒」の中でも純米酒や吟醸酒はこの10年、伸びており、手堅く消費者の心をつかんでいる。

 中でも独特の柔らかな味わいの有機日本酒は国内外の市場を切り開く期待を担う。天鷹酒造は2005年に有機JASの認定を得て翌年から有機日本酒を販売。米国や欧州連合の有機認証も取り、欧州などで販売量を伸ばす。

拡大する写真・図版2018年にスペインで開かれた約30の蔵元の日本酒を紹介するイベント。試飲会とともに商談が行われた=天鷹酒造提供

 同社の社長、尾崎宗範(むねのり)さん(59)は「味とともに、ライフスタイルとして有機産物を選ぶ客層が確実に存在する。そう考えると潜在力は大きい」と語る。拡大する世界の有機産品市場に対して、有機日本酒はやっと浸透してきた段階だ。

「地酒ブーム」を牽引

 「日本酒は『酔う』から、『味わう』酒になってきている」と尾崎さんは言う。それを育み、地方の「地酒ブーム」を牽引(けんいん)して日本酒の世界を変えるきっかけになったのが、作家の稲垣眞美(まさみ)さんの『ほんものの日本酒選び』(1977年)だ。

 当時はサトウキビなど米以外から造った醸造アルコールを加えて量を3倍程度に増やす三倍増醸酒(三増酒)が幅をきかせていた。戦時中、酒米が食用に供出されて醸造アルコールに頼り始め、終戦後も続く米不足から登場したのが三増酒。高度成長期以降も造られ続けた。

拡大する写真・図版ほんものの日本酒選び(三一書房)

 三増酒は、醸造アルコールで辛口気味になる味の調整と、重さを増やす狙いから糖類も加え「ベタベタと甘くなった」。稲垣さんは「日本酒をダメにした」と嘆いた。

 同書は米と米麴(こめこうじ)…

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