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 西日本豪雨や東日本大震災の被災地で、被災の体験や当時の写真を盛り込んだ記録誌を住民らがつくって全戸配布したり、美術館が被災した車や日用品を展示したりしている。災害の記憶や教訓を地域で受け継ぎ、次の災害から命を守るためだ。現場を訪ねた。

 瀬戸内海に面した広島県坂町小屋浦地区。一昨年の西日本豪雨で、中心部を貫く天地川などの流域が土石流と洪水に襲われ、地区で関連死を除き15人が死亡、1人が行方不明になった。

 小屋浦地区は過去に何度も水害に見舞われた歴史がある。1907年7月の豪雨では44人が亡くなった。その後、「水害碑」と「報恩」の碑が建立されたが、これらは今回、ほとんど役に立たなかった。

拡大する写真・図版過去の大水害による被害の状況が刻まれた「水害碑」(左)と「報恩」の碑(右奥)を見上げる出下一教さん=2019年12月20日午前10時30分、広島県坂町、清水康志撮影

 「漢文なので内容がよく分からず、水害碑の存在自体を知らない人もいた」

 自治組織「小屋浦地区住民福祉協議会」の出下一教(いでしたかずのり)会長(71)はこう明かす。水害碑には土石流までの経過など防災上の大切なことが刻まれていたが、時とともに忘れられていた。

 これを教訓に、協議会が昨年1月に発行したのが災害記録誌「土石流からの108日」(B5判、172ページ)だ。豪雨に襲われた7月6日から、復旧の節目の秋祭りが開かれた10月21日まで108日間の足跡をまとめた。2千部作成し、地区の全戸や地元の小中学校に無償で配布。「本として身近にあれば、子どもに語り継いでいくことができ、早期避難により命を守ることができるはずだ」と語る。

拡大する写真・図版小屋浦地区の災害記録誌「土石流からの108日」を手にする出下一教さん=2019年12月20日午前10時15分、広島県坂町、清水康志撮影

 記録誌には、土石流で倒壊した民家など深刻な被害を受けたまちや、復旧作業の様子を記録したカラー写真をふんだんに載せた。その数は100枚を超える。住民らが被災体験や避難生活、青年団の救助活動などを語る多くの証言や、復旧支援にあたったボランティアらの手記も収録した。

 記録誌は1冊1500円で販売もして、収益などでほかの被災地支援に取り組んでいる。昨年の台風19号の義援金に充てたほか、宮城県丸森町には救援物資を届けた。出下さんは「みなさんのおかげで復興のめどがついた。できる範囲で支援を続けたい」と語る。

 坂町では、保育園児の母親らが被災体験をつづった手記集も発行された。

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