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 見えないはずの富士山を撮った――。大阪府吹田市の会社員森翼さん(31)が、滋賀県高島市の比良山地・蛇谷ケ峰(じゃたにがみね)(902メートル)山頂から、254キロ離れた富士山剣ケ峰(3776メートル)の写真撮影に成功した。本来、蛇谷ケ峰からの富士山は南アルプスの山影に遮られて見えない。光の屈折で起こる一種の蜃気楼(しんきろう)現象が手伝っての一瞬のチャンスを捉えた。

 撮影に成功したのは今年1月19日。真夜中、5時間ほどかけて登った山頂。寒さに震えながら日の出を待った。東の空がかすかに白んだ。望遠レンズ2千ミリに相当するカメラをのぞくと、長野・静岡県境の南アルプス南部の茶臼岳(2604メートル)と加加森(かがもり)山(2419メートル)を結ぶ稜線(りょうせん)のくぼみに、ほんのわずか、富士山頂らしき出っ張りが見えた。

 森さんの写真を見た一般財団法人・日本地図センター相談役の田代博さん(69)は「間違いなく富士山。冬場のその時間帯に山頂にいること自体、たやすいことではない。特筆に値する快挙」とたたえる。

 田代さんは山岳展望研究の第一人者で「富士山博士」として知られる。冬場の澄んだ空気と冷え込みの影響で、光が屈折して遠くの山が浮き上がって見える「蜃気楼とほぼ同じ現象が起きたため」と解説してくれた。

 富士山が見える最遠地は現在のところ、322・9キロ離れた和歌山県那智勝浦町の色川富士見峠。森さんは「蜃気楼現象を捉えれば、もっと遠方から見える可能性もある」と意欲をかき立てられている。(三浦亘)