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 人手不足が深刻な保育や介護などの事業者が、人材紹介業者に払う手数料負担の高騰に苦しんでいる。手数料目当てで早期退職を繰り返す悪質な例もあり、政府も対策を打ち出しきれていない。危機感を強める自民党は昨年末に議員連盟を立ち上げ、6日から対策作りに向けた議論に入った。

拡大する写真・図版茨城県の特別養護老人ホーム。以前に人材紹介業者を通じて採用した職員が3カ月で辞めてしまった=2020年1月8日、茨城県、西村圭史撮影

 国会内で6日に開かれた、介護や保育など福祉分野の人材確保を考える議連がまず焦点を当てたのは、保育や介護の事業者が人材紹介業者に支払う過重な手数料負担だ。根本匠前厚生労働相は「政策的な対応を政治の責任として考えたい」と述べた。

年俸の40%要求する業者も 

 保育事業者などにとって問題は深刻だ。待機児童の増加が社会問題化していた2018年4月、東京23区内で100人規模の保育所を開設した運営法人は、保育士を自前で集められずに人材紹介業者を利用した。計8社の業者から14人の紹介を受けると、手数料は約1400万円に上った。当初は想定していなかった支出だった。

 制度上は手数料に上限はなく、年俸の40%を要求する業者もあった。法人理事長は「準備資金だけでは足りなくなった。紹介手数料にこんなにかかるなんて」と嘆いた。

 問題は業界全体に広がる。手数料を目当てに違約金の期限が過ぎるたびに早期退職させる業者も横行している。保育推進連盟の吉岡伸太郎副会長は「我々の財源は自治体からの委託費で公費。本来は職員の処遇改善や子どもたちのために使いたいが、手数料負担に回っている。手数料の上限や厳格なルールを設けてほしい」と訴える。

早期退職にリスク 介護サービス一部中止に

 介護の現場では、施設運営に支障が出始めている。

 茨城県の社会福祉法人「愛(めぐみ)の会」は、手数料80万円で紹介を受けた准看護師が3カ月で退職した苦い経験がある。のちに職員が不足したとき、手数料負担の重さや早期退職のリスクから紹介業者を通じた補充ができず、短期入所サービスの一部を1年以上中止した。同法人の木村哲之・法人本部長は「人手不足が強まり、紹介業者から足元を見られている」と話す。

 実態調査に乗り出した政府は昨年12月に初の調査結果を公表した。医療分野では看護師・准看護師の78・7%、介護分野では介護職員の41・5%が紹介業者を利用。手数料の平均は看護師・准看護師が91・8万円、介護職員が50・1万円で、早期退職に悩む実態も明らかとなった。

規制強化、人材難が深刻化するとの懸念も

 政府の対策は遅れ気味だ。昨年11月の臨時国会で対応策を問われた加藤勝信厚労相は「規制をかけたからといって人手不足が解消するかというと、そうともいかない」と説明。規制強化で紹介業者が撤退すれば、人材難が深刻化すると懸念する。

 政府は17年に職業安定法の指針を改正。紹介業者に対し、採用から2年間は転職を勧めてはならないとし、転職のたびに求職者に金銭を渡す「お祝い金」の慣例も「望ましくない」とした。それでも慣例は続き歯止めとなっていない。

 6日の議連に出席した関係団体からは、紹介料の上限規制を求める声が上がった。ただ、政府内には「民間契約であり、行政による規制強化は慎重であるべきだ」との声もある。議連の国光文乃衆院議員は「(規制強化ではなく)優良な紹介業者の認定制度などを検討したい」と話す。

 議連は夏前に提言をまとめ、政府に対策を求める予定だ。(西村圭史)

拡大する写真・図版自民党の議員らは、福祉人材の紹介料負担について議論した=2020年2月6日午後、国会内、西村圭史撮影