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 新型コロナウイルスの集団感染が起きている大型クルーズ船の感染者のうち、4人が重症だと明らかになった。肺炎はどんな病気で、どのような人が重症化しやすいのか。

 肺炎は、細菌やウイルスなどの病原体が空気の通り道である気道を通じ肺の中に入り、炎症を起こした状態だ。感染する病原体が新型コロナウイルスというのが今回のケースだ。初期ではかぜやインフルエンザのようにせきや発熱、関節痛の症状がでる。悪化すれば肺炎になり、呼吸困難や胸の痛みがおきる。

ウイルス増殖 抑える薬なし

 肺炎球菌が病原体の場合はワクチンもあり、抗菌薬も効く。

 新型コロナウイルスでは、ワクチンや有効とされる薬はまだない。熱を下げたり安静にしたりするといった対症療法をし、感染者を他の人と接触させないなどの対策をとる。機械で酸素濃度が高い空気を肺に送ったり、点滴で血中の水分を補ったりしても改善しないと重症化することもある。

 日本呼吸器学会のガイドラインは「重症」を、脱水の程度▽血中の酸素飽和度▽血圧▽年齢(男性70歳、女性75歳以上)――などの指標から見極める。東京医科歯科大の瀬戸口靖弘特任教授(呼吸器内科)は「血中の酸素濃度が低下すると、他の臓器にも障害が出てくる」と話す。

 重症化しやすいのは、糖尿病やがんなどの病気で免疫力が落ちている人や、慢性の呼吸器疾患がある人。中国で報告されている重症例の多くは糖尿病、高血圧、心臓の病気などの持病がある人や高齢者とされる。クルーズ船で重症と判明した4人も60代1人、70代3人で、いずれも持病があるという。

X線検査「判断難しい」

 肺炎をどう判別するか。第一種感染症指定医療機関の京都府立医科大病院の藤田直久・感染対策部長によると、胸部X線検査で肺に炎症があり白い影が写れば、肺炎とわかる。その後、粘膜やたんなどを調べ、どの細菌やウイルスが原因か特定する。

 X線検査をするかどうかは、患者の症状や行動の履歴から判断する。藤田さんは「症状が軽く、中国・武漢市に絡む情報がわからなければ、X線検査までする判断は難しい」と話す。

 見えにくいこともある。瀬戸口さんによると、肺胞である程度ウイルスが増殖して炎症がおきないとX線やCTをとっても影が見えないという。患者が最初に取り込んだウイルス量や増殖の速度はまちまちなので「症状や影が出るまでの日数がずれてくる」という。

 またウイルスが殺した細胞を栄養にして肺炎球菌が増殖することで細菌性の肺炎が複合して起こることがあるという。中国で重症例が多い理由について、瀬戸口さんは「ウイルス性肺炎のあとに細菌による肺炎が起こっている可能性もある」と話す。

 2018年の人口動態統計によると、肺炎は日本人の死因の5位で、年間約9万4千人が亡くなっている。食べ物が誤って気管に入ることがきっかけで発症する誤嚥(ごえん)性肺炎は統計上、別カウントで年間3万8千人が亡くなっている。誤嚥性肺炎も肺炎球菌の感染によるものが多い。症状がはっきり表れない高齢者の患者も多く、重症化して初めて診断される場合もある。(三上元、野中良祐