拡大する写真・図版大皿に盛られた魚生をめいめいが箸で取り、高い場所から放っていく=シンガポール、守真弓撮影

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 「もう飽きた」

 国民の75%を中華系住民が占め、「華人国家」とも呼ばれるシンガポール。春節(旧正月)の時期になると、地元の友人たちからこんな愚痴が聞こえてくる料理がある。

 「魚生(ユーシェン)」と呼ばれ、この時期の宴席では必ずといっていいほど登場する一品だ。仕事の付き合いのある営業職の人は、1カ月近く毎日食べ続けることもあるらしい。

 文句を言いつつも、なぜみんな毎年、魚生を食べ続けるのだろう。長年の疑問を解消しようと、例年5回は自宅で魚生を食べる会を開くというイェリーさん(34)のお宅を訪ねた。

汚れるほどおめでたい

 シンガポール東北部にあるマンションの一室。ドアを開けると、その明るさに驚いた。壁には、そこかしこに赤と金の新年飾りが貼り付けられ、天井からは真っ赤なちょうちんがつるされている。その中で、20人ほどがマージャン卓を囲んだり、談笑したりしてくつろいでいた。この日は、イェリーさんと夫のマーカスさんの友人らが集まって新年を祝う会。中学生の時からつきあっていた2人が、当時から20年近く続けている集まりなのだという。

 「始めるよー!」

拡大する写真・図版イェリーさんの家で用意された魚生。これにピーナツや砂糖漬けのボンタンなどの「縁起もの」食材を足して食べる=シンガポール、守真弓撮影

 イェリーさんが声をかけると、みんなが中央のテーブルに集まった。大皿には、大根やにんじんの千切りが大盛りになった上に、アワビがのっている。この海鮮サラダのようなものに、縁起物の具材を順々に足していくのが魚生のしきたりだ。

 「甜甜蜜蜜(甘い関係が保てますように)」と言いながら梅ソースを、「順順利利(何事も順調に進みますように)」と言いながら、ピーナツオイルなどの入ったドレッシングを振りかける。ごまやコショウ、ショウガなど、一つ一つの食材が加わるたび、歓声が上がる。にぎやかさのピークは、すべての食材が投入された後に訪れた。

 「ファッラ!!!」

 おのおのが「繁栄しよう」とい…

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