拡大する写真・図版日本郵便のパワハラ通報で本格調査される案件は少ない

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 日本郵便の内部通報窓口が2018年4~12月に受けたパワハラ関連通報のうち、本格調査した案件は1割強にとどまることが同社の内部資料でわかった。事実認定した通報内容は1%未満。パワハラはかんぽ生命の不正販売を助長した一因とみられているが、内部通報制度が十分機能していない可能性がある。

 朝日新聞が入手した内部資料では、18年4月~19年2月の日本郵便の内部通報件数は約1700件で、前年より4割増えた。通報窓口が周知された影響があるとみられる。

 通報内容で多いのがパワハラ関連だ。18年4~12月のパワハラ関連通報は前年比8割増の372件で、通報全体の3割を占めた。だが、本格調査したのは48件(13%)、パワハラだったと事実認定したのは2件(0・5%)だ。同じ期間の内部通報全体では3割を調査対象とし、不適正事務などで5%ほどを認定した。パワハラ通報の調査率や事実認定率は低めだ。

 資料では、通報内容は▼「言うこと聞かないなら他局に飛ばすぞ」と恫喝(どうかつ)▼夜9時半まで営業電話をさせ、アポが取れるまで帰さない▼朝礼で「人としてクズ」「給料泥棒」のような発言▼社員が見ている場で怒鳴りながら後ろから足蹴り――など。調査対象外とした案件の理由は「抽象的内容」「発生局・加害者不明」「誹謗(ひぼう)中傷」などだとしている。

拡大する写真・図版日本郵便が2018年春に社内で配った内部通報カード

 内部通報制度に詳しい山口利昭弁護士は「調査対象が1割強というのは少ない印象だ。パワハラへの意識や感度が低く、通報への適切な対応ができていないのではないか」と指摘。「パワハラにはブラック企業との評価や職場環境悪化などにつながるリスクがあり、通報は積極的に調べるべきだ」と話す。

 かんぽの不正問題では、パワハラまがいの指導や研修で郵便局員を不正へと追い立てた事例が数多く明るみに出た。だが、日本郵政グループの業務改善計画には、パワハラそのものの改善策はない。日本郵便の衣川和秀社長は先月末の記者会見で「パワハラがあれば今の規定で厳正に処分する」と述べた。

 郵便局の現場では、日本郵便の内部通報制度に対して「通報してもなかなか調査してくれない」との声がある。かんぽ不正を調査した特別調査委員会は、昨年末公表の報告書でかんぽ関連の内部通報が少ないと指摘したものの、制度がなぜ機能していないかについては踏み込んでいない。

 日本郵便は取材に、内部通報件数などは公表しないとした上で、「通報は原則全て調査するが、具体性が乏しく追加情報が得られなかったり、通報が取り下げられたりするなどの理由で調査できない場合がある。これまで同様、パワハラをうまない職場環境の整備に全力で取り組む」と回答した。(藤田知也)