写真・図版

[PR]

 原爆症の認定をめぐり、経過観察のための通院が認定要件の「治療が必要な状態(要医療性)」に当たるのか。この点が争われた訴訟の上告審判決が25日、最高裁第三小法廷(宇賀克也裁判長)で言い渡される。要医療性について下級審では判断が分かれており、最高裁が初めて統一判断を示す見通し。被爆者側が勝訴すれば、今後の認定実務に影響を与えそうだ。

原爆症認定制度
原爆投下時に爆心地から一定の範囲にいた人や2週間以内に被爆地に入った人、その胎児などには被爆者健康手帳が交付され、医療費は無料になる。国はさらに、指定する病気になった人には放射線の影響の有無にかかわらず、健康管理手当を支給。病気の原因が放射線で、治療が必要な「原爆症」と認定されると、より高額な医療特別手当に切り替わる。3年ごとに審査があり、治療が不要になれば減額される。

 原告は広島や長崎で被爆し、白内障や慢性甲状腺炎になった女性3人。現在は広島、佐賀、愛知各県で暮らす。原爆症の認定申請を国に却下されたため、処分の取り消しを求めて提訴していた。

 原爆症の認定要件は被爆者援護法で定められている。①原爆の放射線が原因で病気になった(放射線起因性)②要医療性がある――という2要件を満たせば、医療特別手当(月額14万1360円)が支給される。原告3人は二審で放射線起因性は認められたが、要医療性の判断が割れた。

 3人は症状が悪化したり、手術の可能性が生じたりしないかをチェックするために経過観察が欠かせないと訴えた。広島と愛知の女性については、広島と名古屋の両高裁がそれぞれ要医療性があると認定。「経過観察も治療の一環で、積極的な治療の有無は問わない」などと指摘した。

 一方、佐賀の女性について福岡高裁は、女性が手術を必要とする状態ではなかったとし、「経過観察にとどまる場合は要医療性は認められない」と判断。被爆者援護法が被爆者の症状に応じて段階的に手当を定め、原爆症の認定者を最も手厚く保護している点も重視した。

 1月に開かれた弁論で、原告側は「症状を継続的に把握し、手術の必要性を含めて経過観察をすることは不可欠。国は要医療性の解釈を狭めている」と主張。国側は「症状を改善するための積極的な治療を受けていない」と反論した上で、福岡高裁が指摘した手当の仕組みに改めて言及。「原爆症の援護が手厚いのは、要医療性に特別な意味を見いだしているからだ」と強調した。

 厚生労働省によると、新しい審査基準が適用された2008年4月から19年9月までの原爆症の認定申請は2万7954件。1万6919件が認定された一方、要医療性を理由に1866件が却下された。また、原爆症と認定されても3年ごとに更新審査があり、審査が厳格化された14年度から18年度までの5年間で更新対象の18%にあたる2453人が要治療性がないとして手当を削減された。

 被爆者の高齢化で申請件数は減っており、18年度は1176件で5年連続の減少となった。(北沢拓也)