拡大する写真・図版「湯かけ祭り」で、お湯を浴びる山木館の15代目、樋田勇人さん=2020年1月20日、群馬県長野原町、長島一浩撮影

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 この春完成する八ツ場(やんば)ダム。群馬県長野原町の川原湯温泉で江戸時代から360年ほど続く老舗旅館「山木館」からは、すでに試験貯水で水をたたえたダム湖が望める。

拡大する写真・図版高台の造成地に移転した川原湯地区。かつての温泉街は水没した。手前中央は山木館=2020年2月17日、群馬県長野原町、ドローンで遠藤啓生撮影

 15代目の樋田勇人さん(25)は前橋市育ち。高校3年の夏に山木館でアルバイトをした際、跡取りにと声を掛けられた。大学在学中に、親戚で14代目の洋二さん(72)と文子さん(71)夫婦の養子となった。

拡大する写真・図版愛犬と散歩する山木館の14代目、樋田洋二さん=2020年2月17日、群馬県長野原町、長島一浩撮影

 川原湯に来てから、70年近くダム計画にほんろうされた先人たちの苦労を知った。10年前に亡くなった13代目の富治郎さんはダム反対期成同盟の委員長から町長に。国や県と板挟みになり、条件付き賛成へと転じた。洋二さんはダムを前提とした地域の再生について数十年悩み続けた。

拡大する写真・図版山木館の歴史コーナーには、明治時代の川原湯温泉を伝えるものが飾られていた=2020年1月19日、群馬県長野原町、長島一浩撮影

 水没した旧温泉街から移った高台の造成地で再開した旅館は5軒。最盛期の4分の1程度だ。住民の流出と高齢化も進んだ。「行政の計画は年をとらないけど、住民は年をとってだんだん気力もなくなる」と勇人さんは実感している。

拡大する写真・図版八ツ場ダムの本体の上で、旅行関係者らにダムの歴史や魅力を話す樋田勇人さん。3年前からダムツアーのガイドを務めている=2020年1月30日、群馬県長野原町、長島一浩撮影

 そんな川原湯で1月20日の早朝、400年続くとされる伝統の奇祭「湯かけ祭り」があった。地元で貴重な若手の勇人さんも下帯姿で参加した。「地域を元気にできるのか不安はある。ただ、話題性のあるダムを観光資源に活用し、町を元気にしたい。訪れた人たちの人の輪が次々と生まれるような旅館にしたい」。ダムツアーの企画やガイドにも精力的な若旦那。まなざしは真剣だ。(文・丹野宗丈、写真・長島一浩