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 食品包装にも使われるラップフィルムに酸素原子を衝突させると、抗菌作用が現れる――。そんな研究結果を、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と「クレラップ」で知られるクレハが発表した。酸素原子はもともと、宇宙で人工衛星に傷をつける「邪魔者」だったが、発想の転換で思わぬ結果がもたらされた。

 宇宙はほぼ真空だが、国際宇宙ステーション(ISS)や人工衛星が回っている高度数百キロでも、ごく薄く大気がある。なかでも酸素は、分子のO2が太陽の紫外線で分解され、Oだけの原子として秒速約8キロの猛スピードで飛び交っている。あまりに速いため、原子のような粒でも外装のプラスチックなどが削られ、耐熱性が下がったり、電子機器がショートしたりする恐れがあった。

 削られたプラスチックは、高さ1マイクロメートル(1千分の1ミリ)の剣山のようにギザギザになる。この構造が何かに利用できないか。宇宙技術の活用を考える会議で、クレハから「抗菌に使えるのでは」と提案があった。2017年には共同研究も始めた。

 筑波宇宙センター(茨城県)にある大型施設で、プラスチックのラップフィルムに酸素を高速で照射してギザギザにし、黄色ブドウ球菌を24時間かけて様子を観察すると、菌の数は、ギザギザがない場合に比べて150分の1から1500分の1に減った。

 JAXA研究開発員の後藤亜希さんは「凸凹構造が菌の増殖を阻んでいるのは確かだが、数マイクロほどの菌が1マイクロの凸凹でなぜ増殖しなくなるのかは謎です」と話した。(石倉徹也