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 細菌性髄膜炎など、命に関わる感染症の予防のため、子どもたちに接種するヒブワクチン。公費で受けられる定期予防接種の対象だが、1月から供給が止まり、「予防接種が受けられない」と、親たちに動揺が広がっていた。25日、約1カ月ぶりに供給が再開される見通しが示された。何が起きていたのだろうか。

 東京都足立区の和田小児科医院では、1月末を最後に、ヒブワクチンの入荷がストップした。院長の和田紀之さんは「ワクチンが足りず、リスクが高い月齢の低いお子さんを優先せざるを得なかった」と話す。

拡大する写真・図版ヒブワクチンが入手困難であることを知らせる貼り紙=東京都足立区の和田小児科医院

 ヒブワクチンの「ヒブ」とは、ヘモフィルス・インフルエンザ菌b型という細菌のことだ。インフルエンザ菌には7種類あり、b型は特に重い感染症を引き起こす。インフルエンザウイルスとは名前が似ているが別物だ。

 子どもがヒブに感染すると、脳を包む髄膜に炎症が起きる細菌性髄膜炎や、のどの奥が腫れて呼吸がしにくくなる急性喉頭蓋(こうとうがい)炎などの重い病気になるリスクがある。後遺症が残ったり、死亡したりすることもある。

 こうした病気を防ぐため、ヒブワクチンは、生後2カ月~5歳未満の子どもが公費で受けられる定期予防接種の対象となっている。1回打っただけでは十分な効果を得られないので、日本小児科学会が推奨するスケジュールでは、生後2カ月になったら4~8週間隔で3回、1歳になったら1回の計4回を受けることになっている。

拡大する写真・図版ヒブワクチンとは

 国内で使われているヒブワクチンは、フランスの製薬会社サノフィが製造している。昨年12月、同社はワクチンの注射針部分にさびが見つかる事例が日本国内であったと公表した。同社のヒブワクチンは溶解液の入った注射器とセットで流通しており、他の注射器で代用はできない。その後、他にも注射針にさびが見つかったという。薬剤自体には問題がないが、フランスの製造元で原因の調査が始まり、今年1月下旬から供給を一時取りやめていた。

 日本国内で使われているヒブワクチンはサノフィ社製のものだけだ。そのため、医療現場ではワクチンが不足していた。

 サノフィは今月25日、調査が完了し出荷が再開できることになったと発表。注射針のさびは、いくつかの要因が重なって偶発的に発生したものと結論づけ、今後は出荷前の検査を強化するとしている。同社の広報担当者は「保護者や医療関係者の皆様にご心配をおかけしたことをおわびします。3月2日の週以降は順次、医療機関に納品が可能になる見通しです」と話す。

 ワクチンに詳しい川崎医科大学小児科の中野貴司教授によると、かつては細菌性髄膜炎になる子どもが年間1千人ほどいて、その原因の6割ほどがヒブによるものだった。ヒブワクチンは2008年に国内で接種できるようになり、13年には定期接種化され、小児の細菌性髄膜炎の発症は激減。厚労省研究班が10道県の5歳未満を対象に行った調査では、ヒブによる髄膜炎の10万人あたりの罹患(りかん)率は08~10年は7.7だったのが、13年には0.2に、14年には0になった。

 中野さんは「1カ月程度であれば風邪などでも遅れることはある。重要なワクチンなので、供給が再開されたら必ず打てるよう、かかりつけ医に問い合わせを忘れないようにしてほしい」と話す。(松本千聖)