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 今日は腎不全に対する腎移植についてお話しします。

 腎移植は他人の腎臓を腎不全の患者に移植して腎臓の働きを回復させる治療法です。末期腎不全の患者の腎機能を代替する治療法としてはほかに血液透析と腹膜透析がありますが、腎移植は末期腎不全の唯一の根治療法です。

 腎臓は左右に一つずつありますので、腎移植では、提供者(ドナー)の腎臓のうち一つを摘出し、患者(レシピエント)に移植します。レシピエントの右下腹部を斜めに切開して、骨盤の中にドナーの腎臓を植え込む手術をします。その際、ドナーの腎動脈を患者の外腸骨動脈または内腸骨動脈に、ドナーの腎静脈を患者の外腸骨静脈につないで血流を確保します。移植された腎臓でつくられる尿を運ぶため、ドナーの尿管を患者の膀胱(ぼうこう)につなぎます。

 腎移植は透析治療と比べて様々な優れた点があります。

 具体的には、①透析による時間的制約や食事・水分制限から解放される②透析に伴う脳梗塞(こうそく)や心筋梗塞などの心血管系合併症が防げるため透析を続けた場合より余命が長くなる③血圧を調整するホルモンや血液をつくるホルモンの産生など、透析ではカバーできない、本来の腎臓の機能も果たすため生活の質がよくなる――ことが利点として挙げられます。

 しかし、残念ながら良い点ばかりではありません。腎移植後は常に、患者の免疫細胞の反応(拒絶反応)によって移植された腎臓の機能が低下するリスクがあります。それを抑えるために一生涯免疫抑制剤の内服を続ける必要があり、免疫抑制剤による合併症(高血圧、糖尿病、感染症など)も伴います。ただし、合併症の予防・早期発見・早期治療を行うことで移植腎機能の低下や喪失を防いだり、遅らせたりすることができるようになってきています。また、合併症を減らすよう免疫抑制剤の量を減らしたり、組み合わせを変えたりする工夫もなされています。

 腎移植には、脳死になった人や心停止した人から提供される献腎移植と、親族から提供される生体腎移植の二つの方法がありますが、日本では約9割が生体腎移植です。

 移植腎の生着率や移植後の生存率に加え、ドナーとレシピエントの血液型が違っても移植可能なこと、献腎移植と比べて移植までの待機期間が短いことなど、レシピエントにとって生体腎移植はあらゆる点で献腎移植より優れています。ただし、生きている人から腎臓の一つを提供してもらう生体腎移植は、腎臓を摘出する際にドナーの体を傷つけることや摘出手術の後も長期にわたってドナーの体の状態を見守る必要があるという問題があります。

 生体腎移植では以前は親子間移植が主体でしたが、近年では配偶者間移植が増加しており、ほぼ同じくらいの割合となっています。免疫抑制剤や医療技術の進歩もあり、ドナーとレシピエントの血液型が違う場合の移植成績も血液型が適合している移植と比べて遜色ないものとなってきています。

 腎移植は末期腎不全患者さんにとって素晴らしい治療法です。しかし、日本では世間一般だけでなく医療従事者にも情報が十分行き届いているとは言えず、選択される割合が少ないのが現状です。この記事を読んでくださった方が、少しでも腎移植に興味を持っていただければ幸いです。

 弘前大学病院では泌尿器科、消化器外科、腎臓内科の医師が協力し、麻酔科や手術部、看護部、薬剤部などの他部署とも連携を図りながら、「弘大腎移植チーム」として腎移植に取り組んでいます。手術と周術期管理は泌尿器科で、術前検査や術後の診療は腎臓内科で行っています。生体腎移植を希望される患者さんは、かかりつけ医に当院の腎臓内科を紹介してもらうか、腎臓内科の移植コーディネーターにご相談ください。(弘前大学大学院医学研究科泌尿器科学講座講師 鈴木裕一朗)