高知伝統の献杯・返杯、自粛 県「間接キス、リスク大」
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、高知県は宴会などで同じ杯を使って酒を酌み交わす「献杯」や「返杯」を当面、県民に自粛するよう求めている。27日に文書を発表した。献杯・返杯は高知の酒文化で酒席では日常的に見られるが、県は「感染リスクが大きい」と注意を促している。
感染はつばやくしゃみなどで広がるため、県健康長寿政策課の担当者は「献杯や返杯は間接キスになるので感染リスクが高く、やむを得ない」と話した。県は観光や飲食、宿泊施設など関係団体にも通知し、協力を求めている。県内では、高知市内で3月に開催予定だった毎年恒例の宴会イベント「土佐の『おきゃく』」が中止となっている。
28日の昼すぎ、高知の名物をつまみに朝から酒が飲める複合商業施設「ひろめ市場」。観光客や地元の酔客でにぎわう週末だが、空席が目立つ。相席になった同士が返杯を交わすいつもの光景もみられない。
サワーを飲んでいた高知市の男性(66)は牛肉コロッケをつつき、「献杯や返杯は感染の象徴ではない。高知の文化を大事にした方が良い」と不満を漏らした。昼食を食べていた高知市の会社員女性(37)の職場でも、飲み会で返杯することはよくあるという。だが「返杯をすると、自らウイルスを広めることになるかもしれない」と県の自粛要請に理解を示した。
市場内の居酒屋「旬太郎」を経営する吉川忠雄さん(61)は酒飲みの高知県人でも外で飲む機会が少なくなることを心配する。
「新型コロナウイルスの影響が1カ月も続けば、飲み屋は立ち行かなくなる」(菅沢百恵、湯川うらら)
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