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 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受け、国際会議の「テレビ会議化」が進んでいる。主要国の首脳協議が相次いでテレビ会議方式にシフトするなど、トップ会談も例外ではない。ただ、前例の少ない対応だけに思わぬトラブルも起きているようだ。首脳らのやりとりは、実際どんな状況なのか。

新型コロナ対応、画面にずらり各国トップ

 「異変」が起きたのは、英国のジョンソン首相が発言した時だった。

 26日夜に行われた主要20カ国・地域(G20)の緊急首脳会議。安倍晋三首相は首相官邸小ホールでテレビ会議に臨み、画面には各国の首脳の顔がずらりと映し出されていた。

拡大する写真・図版主要20カ国・地域(G20)首脳緊急テレビ会議に臨む安倍晋三首相=2020年3月25日午後9時37分、首相官邸、内閣広報室提供

 日本政府関係者によると、こんな光景があったという。激しい身ぶり手ぶりで熱弁を振るうジョンソン氏。ただ、その声はまったく聞こえず、首相らはただその姿を見つめるしかなかった――。

 G20首脳によるテレビ会議は初めてで、新型コロナウイルスへの対応を協議した。会議は非公開。発言は1人3分の割り当てだが、政府関係者によると、ジョンソン氏は結局無音のまま発言を終えたという。雑音を防ぐため、発言者以外は「ミュート(消音)」のボタンを押しておくルールだったが、ジョンソン氏はそれを解除し忘れたようだ。議長国のサウジアラビアのサルマン国王は、ジョンソン氏の「無音」には触れず、会議を進めたという。

拡大する写真・図版主要20カ国・地域(G20)首脳緊急テレビ会議に臨む安倍晋三首相=2020年3月26日午後9時48分、首相官邸、内閣広報室提供

謎の欠席、巨大テレビ画面・・・

 また、この会議では、出席予定だった南アフリカのラマポーザ大統領が画面に姿を現さなかった。政府関係者によると、理由は定かではないという。

 会議で使うテレビ画面は国によって様々だ。

 中国の国営新華社通信が報じた写真によると、習近平(シーチンピン)国家主席が出席したG20首脳テレビ会議の会場には、横10メートルはありそうな巨大な画面があった。まるで国力の強大さを誇示するようにも見える。一方、安倍首相の前に置かれたのは、家庭にもあるごくありふれたテレビ1台だけだった。

通訳音声に雑音、外相が英語で指摘

 テレビ会議は首脳だけではなく、外相や財務相などの閣僚レベルでも頻繁に開催されている。

 20日にあった日中韓3カ国外相の初のテレビ会議。会議の冒頭が報道陣に公開されたが、中国の王毅(ワンイー)国務委員兼外相の発言の際に突然、通訳の音声に雑音が入った。その後も雑音が入ったまま王氏の発言は続き、しばらくして茂木敏充外相が英語で指摘。冒頭発言はここで打ち切りとなり、報道陣は退出を促された。約70分間の協議後、茂木氏は「(冒頭の雑音の)後はかなりクリアに聞き取ることができた」と満足げだった。

拡大する写真・図版中国の王毅(ワンイー)国務委員兼外相、韓国の康京和(カンギョンファ)外相とテレビ会議をする茂木敏充外相=2020年3月20日午前、東京・霞が関の外務省

 外務省幹部は「電話協議では相手の発言の途中で割り込むことはできないが、テレビ会議なら手を挙げれば見えるのでやりやすい」とメリットを語る。とはいえ、テレビ会議は対面の「リアル会議」にかなわない面もある。

 25日、米ピッツバーグで開催予定だった主要7カ国(G7)外相会合が、テレビ会議で開かれた。こうした会議では時間を欧米に合わせざるを得ず、日本では25日午後8時から翌26日午前0時過ぎまでと、深夜から未明の対応になった。

拡大する写真・図版G7外相のテレビ会議に臨む茂木敏充外相=2020年3月25日夜、東京・霞が関の外務省、外務省提供

 また、本来は各国外相が一堂に会する機会だけに、合間には二国間(バイ)の会談も行われる予定だったが、今回は行われなかった。茂木氏は「直接会えばバイ会談もでき、利点は多い」としつつ、「移動が制約される中ではこういった形も使いながら、外交の扉はしっかりと開け、コミュニケーションを図っていきたい」と語った。

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 第201回通常国会。国会や政党など政治の現場での様子を「政治ひとコマ」としてお届けします。(太田成美)