もう、うそをつかなくていい 裁判長が異例の10分間

米田優人
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 滋賀県東近江市の湖東記念病院で2003年、男性患者(当時72)を殺害したとする殺人罪で服役した元看護助手の西山美香さん(40)のやり直し裁判(再審)の判決で、大津地裁は31日、無罪を言い渡した。大西直樹裁判長は、捜査の問題点などを指摘する異例の説諭を約10分間にわたり行い、「西山さんの15年を無駄にしてはならない」として刑事司法の改善を訴えた。

大西直樹裁判長の説諭の要旨

 ところで、平成16年7月に刑事に自白したことを後悔し、気に病んでいるかもしれません。ただ、西山さんがうそをついたからといって、西山さんのせいにすることはできません。

 本質的に問われるべきは捜査手続きのあり方です。自白について慎重なうえにも慎重に検討を重ねるべきでした。(医師の鑑定結果)そのものも慎重に検討されたのか重大な疑義があります。

 逮捕から15年以上経って、初めて開示された証拠もありました。西山さんの取り調べや証拠開示など一つだけでも適切に行われていれば、西山さんが逮捕・起訴されることもなかったかもしれません。

 西山さんとご家族もつらく苦しんだと思います。時間を巻き戻すことはできません。問われるべきは捜査のあり方、裁判のあり方、刑事司法のあり方。大切な問題提起をしていることは間違いありません。

 刑事司法にはまだまだ改善する余地があります。刑事司法に携わる関係者が自分のこととして考え、刑事司法の改善に結びつけていかなければならないと思っています。西山さんの15年を無駄にしてはならないと思います。

 今回の再審は、これからの刑事司法をよい方向に変えていく大きな原動力になります。一方で、男性患者のご家族のことを忘れてはならないと思います。

 「一人一人の声を聞いて審理していただきたい」という西山さんの話に驚きました。当たり前のことだと思っていますが、私自身、西山さんの発言を聞いて一人一人の声を聞く重要性を再確認しました。

 15年あまり、さぞつらく苦しい思いをしてきたと思います。もう西山さんはうそをつく必要はありません。これまで裁判を通して支えてくれる人に出会ったと思います。これからは自分自身を大切に生きてもらいたいです。今日がその第一歩となることを願っています。(米田優人)