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記者の視点

 安倍晋三首相が突然要請した小中高校などの全国一斉の休校問題。週が明けて休校期間が始まった2日、国会審議に首相が登場し、野党と対峙(たいじ)しました。

 首相は「専門家の知見によれば、これから1~2週間が急速な拡大に進むか、収束できるかの瀬戸際となるとの見解がすでに示されている。学校での子どもたちへの集団感染を防がなければならない」と紙を読みながら答弁する一方で、「この臨時休業の要請については直接専門家の意見を伺ったものではありません」と明らかにしました。

 卒業式が中止になったり、共働きやひとり親世帯が途方に暮れたりするような決断を「専門家に聞かずに決断した」という答弁に、議場にどよめきが起きました。

 首相が休校要請を表明したのは先週木曜日(2月27日)の午後6時過ぎでした。首相と一部の側近たちで決めたため、自民党幹部たちも「寝耳に水」でした。同党幹部の一人は、学校給食に牛乳を卸している地元の酪農家から突き上げられたと言います。官邸の迷走と受け止めた別の幹部は「政権末期だ」と周囲に漏らしました。

 国民が知りたいのは、どうして首相が急転直下、一斉休校を決断したのかという点に尽きると思います。なぜ全国一斉だったのか。なぜ子どもたちが密集する学童保育はいいのか。春休みが終われば本当に再開するのか。

 親たちが抱く疑問の数々に、首相はこの日の国会審議で明確に答えませんでした。私はこの週末、近所の母親たちに話を聞きました。慌ててバイトのシフトを外してもらったり、お弁当の具材を買い出しに行ったり。全国で、多くの子どもたちが家にこもる生活を強いられています。

 それでも、母親たちは必ずしも全国一斉休校自体を批判していたわけではありません。多くの家庭に多大な影響を与える決断をするのに、十分な準備や相談があったとは思えなかったことに、戸惑っているようでした。

 「首相は賭けに出た」などと解説する与党幹部もいます。一方で、なじみの作家などとの夜の会食は続けています。単なる賭けではなく、熟考の末の決断であったなら、国民にその根拠をしっかり説明するべきではないでしょうか。(今野忍)