パラパワーリフティング男子で2012年ロンドン、16年リオデジャネイロ両パラリンピックを連覇したシアマンド・ラーマン(イラン)が1日、自宅のあるイランのオシュナビエで死去したと、国際パラリンピック委員会が同日発表した。31歳だった。心臓発作とみられる。

 リオデジャネイロ大会では、前人未到の300キロ台を挙げた。このときの310キロは、男子107キロ超級の世界記録となっている。

パラスポーツ界、名の知れた「超人」

 パラスポーツ界では名の知れた「超人」の一人だった。ラーマンが注目されたのは、健常者を超える記録にあった。パワーリフティングとは重りのついたバーベルを押し上げ重量を競う競技の総称で、パラリンピックではベンチプレスが実施される。健常者のトップ選手がパラとほぼ同じルールで300キロに届かないのに対し、ラーマンは310キロ。東京パラは、自身が持つ世界記録の更新を狙う舞台となるはずだった。

 リオ大会前の16年夏、イランで会った。小児ポリオの影響で下半身が不自由になったこと。16歳で競技に出会い、110キロから記録更新の面白さにのめり込んだこと。そして、「自分に期待し、目標を超える。これほど楽しい瞬間はないよね」。170キロの巨体を窮屈そうに車いすに押し込みながら、リフターの醍醐(だいご)味を語ってくれた。

 世界記録を更新する度に、禁止薬物使用の疑惑の目にさらされた。イランを訪れた時のインタビューでは、出された紅茶にまったく口をつけなかった。理由を尋ねると、「僕は競技に人生をかけている。だから敏感にもなる。たとえ、イランのパラリンピック委員会会長の部屋で出されたものでものまない」。

 試技前には必ず「アラー(神よ)」と叫び、成功後は笑顔を振りまく。東京でも、丸みのある巨体から再び世界記録を生みだし、人間の身体が持つ可能性を感じさせてほしかった。(榊原一生)