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 米連邦準備制度理事会(FRB)が大幅利下げを決めたが、金融市場の動揺が収まらない。決定後も米ダウ工業株平均は一時1千ドル近く下げ、4日の日経平均株価の終値はほぼ横ばい。新型コロナウイルスの感染拡大の打撃を抑えるため、主要7カ国(G7)は協調姿勢を示したが、投資家の不安心理が消えない。

 「利下げで混乱したサプライチェーン(製品供給網)が修復できるわけではなく、我々がすべての答えを持っているとも思っていない。ただ、意義ある形で経済の後押しをすることができると信じる」

 パウエル議長は臨時の連邦公開市場委員会(FOMC)後の会見で、「0・50%幅」の利下げについてそう述べた。緊急利下げはリーマン・ショック直後に欧州中央銀行(ECB)など世界の中央銀行と連携して利下げした2008年10月以来、11年5カ月ぶりだ。市場では、利下げで投資家がお金を借りやすくなって株式投資などが進むことで、株安に一定の歯止めをかけられるとの見方がある。

 直前には、パウエル氏を含むG7の財務相と中銀総裁が電話会議を緊急開催。「全ての適切な政策手段を用いる」と共同声明を出したばかりだった。ただ声明は、各国の中銀が「引き続き自らのマンデート(使命)を履行する」と表明するにとどめ、リーマン時のような具体的な協調策は明記しなかった。既にマイナス金利政策をとり、政策手段が限られる日欧の状況なども踏まえた対応だ。

 FRBは昨年7~10月のFOMCで、米中貿易摩擦のリスクを重視した「保険」としての利下げを3回続けて実施。以前から、リスクが顕在化する前に「予防的」な金融緩和に踏み切るという姿勢は明確にしてきた。パウエル氏は3日の会見でも「成長を支えるため適切な行動をとる」と述べ、リスクが高まれば追加緩和もする姿勢を示唆した。

 米経済は好調が続くとはいえ、米個人消費支出の物価指数は1月まで15カ月連続でFRBのインフレ目標「2%」を下回る。FRBにとっては、緩和策が後手に回り、悪影響が消費などの需要面に大きく波及してデフレ圧力が強まることは避けたい。日欧などに比べて利下げの余地が残るうちに先行して緩和を打ち出し、市場の不安をぬぐいたいとの意図があったとみられる。

 11月の大統領選をにらみ、かねてFRBに利下げを要求してきたトランプ米大統領は、緊急利下げの決定後も、記者団に「まだ金利は高すぎる」と指摘。さらに利下げを求める姿勢を強調し、今後も緩和を求めることは確実だ。

 利下げ後のFRBの政策金利の誘導目標は「年1・00~1・25%」。リーマン・ショック前の5%超に比べ、金利水準はすでに相当に低い。今後も利下げを続ければ、金利を下げる余地がなくなる日欧と同様の「ゼロ金利制約」にFRBもぶつかる。政策の手立てが大きく狭まる。

 一方、金利低下で国債の利払い負担も小さくなることから、米学界などで積極的な財政政策に活路を見いだそうとする論調も強まっている。トランプ氏も3日、記者団にさっそく「減税するにはいい時期だ。(野党)民主党がいいというなら賛成だ」と表明。ただ、大統領選に向けて与野党の対立構図が際立つ米議会で、機動的な財政政策が進められるかは不透明だ。

 利下げ決定後、ダウ工業株平均はいったん380ドル高まで上がったが、約15分後には再び値下がり。下げ幅は一時1千ドルに迫り、終値は785ドル安だった。資金は米国債など安全資産に向かい、債券市場では米長期金利の指標となる10年物米国債の利回りが一時、年1%の節目を史上初めて下回った。

 4日はダウ平均が反発で始まり、上げ幅は一時700ドルを超えた。米大統領選に向けた民主党の候補者選びのヤマ場「スーパーチューズデー」で、穏健派のバイデン前副大統領が優位に立ったことが好感された。

 4日の日経平均は、日本銀行が緩和姿勢を強化する期待などから反発したが、上げ幅は午後に縮小。終値は前日より17円33銭高い2万1100円06銭だった。市場では2日に出した日銀総裁談話で国債や上場投資信託(ETF)の買い入れを強化する姿勢を示していることから、「FRBがここまでやったから、日銀も相当買うだろうと投資家は期待している」(SMBC日興証券の牧野潤一氏)との声が出た。

 一方で、国際通貨基金(IMF)のゲオルギエバ専務理事は4日の会見で、この1週間の感染状況の悪化を受け、「(20年の世界経済の成長率が)19年のレベルを下回るだろう」と述べた。19年は金融危機の08~09年以来で最低水準の2・9%にとどまっていた。20年に3・3%へ回復すると1月時点で見込んでいたが、大幅な下方修正となる。(ワシントン=青山直篤)

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