ルアンプラバン=乗京真知
拡大するフライパンに薄く油を引いて焼いて食べる=2020年2月19日、ルアンプラバン、乗京真知撮影
東南アジアのラオスを流れるメコン川沿いに、ごまをたっぷり振りかけた味付けのり風のおつまみ「カイペーン」がある。見た目はまるで韓国のり。くせのある風味と繊維質の歯触りで人気だ。でも、そもそも淡水の川に、海でとれるのりはないはず。いったい何が原料で、どうやって作るのか。
取材のきっかけは、1年半ほど前にラオス帰りの友人がくれたカイペーンだった。前評判通りビールのあてに最高で、なるほど人気が出るわけだと納得した。原料は何かと聞くと、メコン川に「のり」的なものが生えていると言うのだ。
拡大するメコン川沿いの村=2020年2月19日、ルアンプラバン、乗京真知撮影
岩のりが採れる日本海沿いで育った私は、メコン川沿いで採れる「のり」的なものの正体を、この目で確かめたいと思うようになった。もしかして、海女さんのような格好をした村人が、水に潜っているのだろうか。そんな妄想を膨らませながら、ラオスで国際会議の出張が入った2月下旬、カイペーンの生産が盛んなメコン川中流域の町ルアンプラバンを訪ねることにした。
ルアンプラバンは、タイの首都バンコクから飛行機で北に約1時間半の場所にある。黄金色の仏塔が並び、早朝にはお坊さんが托鉢(たくはつ)に歩く、時の流れがゆったりした古都だ。町全体がそっくり世界遺産に登録されている。
船で上流へ。乾期で水かさが減り、川底の岩がところどころ、水面に顔を出している。川辺では牛がたわむれ、農民が畑を耕す。40分ほど上ったところでボートは目的地に着いて止まった。
拡大する水中に竹の棒を突っ込んで、川底の藻をとるサーさん=2020年2月19日、ルアンプラバン、乗京真知撮影
川の中央に中州が現れ、その周りに小舟が数隻、集まっていた。小舟は幅80センチ、長さ約6メートルと細長く、最後尾のエンジンで動いていた。土色の川をスイスイと進む様子は、まるでアメンボのようだった。
船首で操縦するサーさん(25)は、2メートルほどの竹の棒を握っていた。棒の先には、かぎ爪状の金具が付いていた。サーさんは棒を水中に突っ込み、川底の岩をゴリゴリとひっかいた。棒を引き揚げると、かぎ爪に緑っぽい女性用ウィッグのようなものが引っかかってきた。
「できるだけ若く、柔らかいカ…
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朝日新聞国際報道部