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 ADHDであり、一児の母親であるリョウさん。幼稚園に通う娘が、決められた時間通りに朝の準備などをスムーズにできるよう、試行錯誤する様子をお伝えしてきました。

 ようやく軌道に乗ったかにみえた、娘の時間管理。しかし前回、幼稚園の疲れのたまった夕方、娘の「飽きたーーー。もう疲れたあ。やりたくない」という発言に阻まれることになりました。前回は、リョウさんが娘さんに、なぜ時間管理をする必要があるのか、未来を想像させる手助けをして、動機付けを図ったのでしたね。

 しかし、夕方というのは、大人でも疲れのピークなのです。頭では「先にやるべきことをすませてから休もう」とわかってはいても、なかなか難しいかもしれません。そんな夕方に、どう対処すべきなのか。今回は、大人も含めた生活のコツを書いていきます。

日中の予定をコントロールできれば…

 <対処法その1>日中の計画を再検討する

 「明日、朝早くから仕事でハードだから、今日はぼちぼちでいこう」などのペース配分は得意な方ですか?

 夕方に疲れすぎないための根本的な解決は、日中の活動量のコントロールです。つまり、あまり予定を詰め込みすぎず、体力や気力を考えながら過ごすということです。

 予定の分量を管理するために、私は「バーチカル方式」というスケジュール帳をおすすめしています。時間刻みで予定を書き込めるスケジュール帳のことですね。時間枠に入るだけの所要時間の活動を入れることを心がけます。

 時間で計れなくても、自分の体力がどのぐらいなのか、どのぐらい人に気を使うと疲れるのか、集中した後にはどのぐらい疲れるのかなどを日頃からデータとして集めておくとよいでしょう。

 「お出かけは半日に1回までだな」とか、「親友に会う時には終日でも大丈夫だけど、職場の人とはランチの1時間ぐらいが限度かな」とか、「午前中に苦手な経理の仕事があるから、午後はミスをしにくい作業系の仕事をしようかな」といったかんじです。こうした経験を蓄積しながら、計画を立てて行くとあの夕方のしんどさを予防できるかもしれません。

 それでは我が子の場合には、どうしたらいいでしょう?

 外遊びなら何時間ぐらい遊べる体力があるでしょうか。家族で過ごす時と友達と過ごす時とでは疲れ方も違うかもしれません。日差しの強い日や、厳しい寒さでも体力は奪われます。車や電車、バスなどの移動もそうです。

 このような条件の組み合わせから、「土曜日は一日中おでかけしたから、次の日は家でゆっくりしようか」とか、「旅行のときは移動も疲れるから、遅くとも夕方5時には帰宅して次の日からの生活に備えよう」などと組み立てていけば、疲れをためにくいでしょう。

 この一連の流れを親子で会話しておくと、将来お子さんが自分の勉強や部活、友達との約束などの予定を立てるときにも役立ちそうですね。

 しかし・・・これができれば、苦労はしませんよね。特にADHDの方はここが苦手なようで、リョウさん自身もそうでした。

 子どもも同じですね。「今を楽しむんだ!」。そんな信念のもと、精いっぱい生きています。こうした試みが通用しないこともあるでしょう。

 というわけで、ふたつめです。

スペシャルなご褒美を用意したら

 <対処法その2>1日の終わりに楽しい活動を企画する

 子どもの頃の夕方と、親になってからの夕方は、全く別のものになったと思いませんか? きっと多くの人が、子どもの頃から「早くご飯食べなきゃ、次は風呂」なんて焦っていなかったと思うのです。

 大人になると、先が気になります。段取りをこなすために、必死です。大人には夕方急ぐ理由があるけれど、子どもにはあまりないのでしょう。

 「今」を生きる子どもにとって「寝るのが遅くなる」「次の日起きるのがつらい」というのは、夕方てきぱき動くことの理由になりません。今やることと、あとからついてくる結果の時間差が大きすぎるのです。それで、時間管理の必要性を感じにくいのです。

 そこで、私が子どもに対して実践しているのは、「寝る前のご褒美」作戦です。

 お子さんのいる方は、休みの日に家族でおでかけして帰宅が遅くなりそうな時、嫌な予感がしませんか?

 「きっと帰宅したら我が子は、疲れたとか眠いとかいってぐずぐずするんだろうな・・・」

 親自身も疲れきっているので、下手をすると家族同士でけんかのようになるかもしれません。こうしたときにお薦めの方法は、その子どもが猛烈に好きで、日頃味わえない活動をすべてやることをすませた後に設定する作戦です。

 我が家では、少し前には将棋好きな息子に「午後7時半までにお風呂も全部終わって、もう寝るだけってなったら、30分将棋できるよ。もっと早く終わったら20時まで将棋できるよ」といいます。息子は目を輝かせて、こちらが何も言わなくてもてきぱきこなして、大好きな将棋をして、大満足で眠りにつくことができました。親としても、「早くしなさい」と不機嫌な我が子に注意するエネルギーよりは、将棋に30分付き合うエネルギーの方が費やしがいがあると思いませんか?

拡大する写真・図版イラスト・中島美鈴

 兄弟が多いご家庭では、「シアタータイム」と称した寝る前のちょっとした映画タイムはいかがでしょうか。日頃は見られない映画を、壁一面にプロジェクターで映写して、寝るばかりにしたお布団の上で楽しむのです。こうすると、比較にならないほど、子どもたちは喜んで夕方のルーチンをこなします。

 ただ、これはとっておきの、たまにしか使えない方法だと思いませんか? 普通の日の夕方には、何をご褒美にすればいいのでしょうか。次回に続きます。

生きるのがつらい女性のADHD
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<アピタル:上手に悩むとラクになる・生きるのがつらい女性のADHD>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/nayamu/

中島美鈴

中島美鈴(なかしま・みすず) 臨床心理士

1978年生まれ、福岡在住の臨床心理士。専門は認知行動療法。肥前精神医療センター、東京大学大学院総合文化研究科、福岡大学人文学部、福岡県職員相談室などを経て、現在は九州大学大学院人間環境学府にて成人ADHDの集団認知行動療法の研究に携わる。他に、福岡保護観察所、福岡少年院などで薬物依存や性犯罪者の集団認知行動療法のスーパーヴァイザーを務める。