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 中国の習近平(シーチンピン)国家主席の国賓訪日が延期になった。日中関係改善をアピールしたかった安倍晋三首相にとっては大きな「誤算」。両政府は秋以降の訪日実現に向け改めて調整するが、両国内では新型コロナウイルスの影響が広がっており、不透明な状況は続く。

 2月28日午後、中国外交トップの楊潔篪(ヤンチエチー)共産党政治局員は来日した足で東京都内のホテルに向かい、北村滋国家安全保障局長と向き合った。北村氏が「大事なのは10年に1度の国賓訪問にふさわしい成果を得ることだ」と水を向けると、楊氏は「訪日には適切な時期と環境と雰囲気が必要。局長の発言は、私の発言と同じ趣旨だと理解している」と応じた。両氏は延期で一致し、発表の文言も調整した。

 日中両政府は中国で感染が広がった1月以降も、習氏の4月訪日を実現する方針をとり続けていた。中国政府が2月13日に楊氏の訪日を伝達すると、日本政府高官は「習氏訪日を予定通り実現したいという強い意欲の表れだ」と期待感を示した。だが、日本国内でも感染が広がり、中国国内で延期論が高まった。習氏訪日に向けた準備会合が次々と中止され、日本政府も延期に傾いていった。

 2月26日には茂木敏充外相と王毅(ワンイー)国務委員兼外相が電話で協議。茂木氏は協議後「しっかりと成果の上がる訪日とする必要がある」との認識で一致したと明らかにし、延期検討の流れができた。

 もともと首相周辺は「(自民党総裁任期)3期目は日中だ」と意気込んでいた。日朝首脳会談は見通しが立たず、日ロ平和条約交渉も行き詰まる中、習氏の訪日を成功させ、外交成果としてアピールする狙いがあった。

 一方で習氏の訪日には、首相の支持層である保守派が強く反対していた。首相官邸関係者は「保守派から『中国全土からの入国を拒否すべきだ』『中国に甘い』などと批判されてきた。首相にとっては、これで良かったのだろう」と漏らした。(二階堂友紀、太田成美)