拡大する写真・図版第12観音丸に網を揚げるのを手伝う草野裕星さん(右)。左は裕さん=2020年2月25日、福島県沖、柳沼広幸撮影

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 太平洋の福島県沖で、船上が一気にあわただしくなった。2月下旬、相馬市の沖合底引き網漁船「第12観音丸」(42トン)が網を引き揚げると、カレイやメヒカリ、マダラ、ヤリイカ、タコや毛ガニなどが甲板にあふれ出た。

 3人兄弟といとこなど親族6人で操業する船に、この日はひときわ若い少年の姿があった。甲板のウィンチやクレーンを操る機関士草野裕(ひろし)さん(46)の長男、裕星(ゆうせい)さん(18)だ。3月に県立いわき海星高校を卒業し、4月から父親らの後を追って漁師になる。「早く仕事を覚えたい」と乗り込んだ。

 乗組員総出で魚を種類ごとに仕分けていく。裕星さんは父親と並んで作業し、漁師の仕事を覚えていった。なぎの日だが、走る船は揺れ、波しぶきを浴びる。一匹一匹、手でより分ける。下を向いての作業は楽ではない。

 物心つく前から魚市場が遊び場だった。船が港に入ると、浜の母ちゃんが「船迎え」をして水揚げした魚を大きさごとに選別して競りにかける。母の背中におんぶされて通った。選別も手伝うようになり、幼稚園の卒園式で「漁師になる」と宣言していた。

 福島の海は暖流と寒流が交わる潮目の海で、魚の種類も多く、豊かな漁場だ。

 それが一変したのは、小学3年生の時だった。2011年3月。東日本大震災の津波で沿岸部は破壊され、東京電力福島第一原発事故が追い打ちをかけた。沿岸の魚介類から放射性物質が検出され、県沖の漁業はできなくなった。

拡大する写真・図版第12観音丸で波しぶきを浴びながら魚を仕分けする草野裕星さん=2020年2月25日、福島県沖、柳沼広幸撮影

 「10年は海に戻れないのでは…

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