私たちの社会と経済に多大な負担を与えつつ続く新型コロナウイルス対策。『感染症と文明』などの著書がある山本太郎・長崎大熱帯医学研究所教授(56)は「感染防止策はウイルスを弱毒化させる効果が期待できる」としつつ、「最終的にはコロナウイルスとの共生・共存を目指すべきだ」と主張する。感染症は「撲滅するべき悪」ではないのか。人類と感染症の歴史をひもときつつ、聞いた。
文明は感染症のゆりかご
――私たちは「感染症は自然からの脅威であり、人類は文明や科学の力で感染症と闘ってきた」というイメージを持っています。
「それは一面の真実ですが、巨視的には『文明は感染症のゆりかご』として機能してきたことも確かです。現在知られる感染症の大半は、農耕以前の狩猟採集時代には存在していなかった。人間は100人程度の小集団で移動を繰り返し、お互いの集団は離れていた。集団内で新型コロナウイルスのような感染症が発生しても、外には広がれず途絶えてしまう」
「感染症が人間の社会で定着するには、農耕が本格的に始まって人口が増え、数十万人規模の都市が成立することが必要でした。貯蔵された穀物を食べるネズミはペストなどを持ち込んだ。家畜を飼うことで動物由来の感染症が増えた。はしかはイヌ、天然痘はウシ、インフルエンザはアヒルが持っていたウイルスが、人間社会に適応したものです」
《やまもと・たろう》 1964年生まれ。専門は医学、国際保健学。京都大助教授、外務省国際協力局を経て現職。著書『抗生物質と人間』『ハイチ いのちとの闘い』など。
病原体も共生をめざす
――文明の成立と共に人類は流行病の苦しみを背負ったわけですか。
「私たちは感染症を『撲滅す…