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 家畜伝染病「豚熱(CSF、豚コレラ)」の感染源の一つにみられている野生イノシシの捕獲頭数が県内で減っている。豚熱に感染して死ぬイノシシが増えているのではないか――というのが愛知県の見立てだ。捕獲頭数の影響が、ある業界にも影響を与えている。

 県野生イノシシ対策室によると、2018年度に県の許可を得て捕獲されたイノシシは9250頭。イノシシによる農作物の食害を防ぐため、県は狩猟や捕獲を勧め、イノシシの肉を活用したジビエ料理のPRもしていた。

 ところが、豚熱の感染が広まった後、19年4月から今年1月までの間に捕獲されたのは5754頭。前年同期比の7割に減った。特に、豊田市や瀬戸市など野生イノシシの豚熱感染が確認されている市町では、18年度と比べ半分ほどしかイノシシが捕獲されていない。「CSFで死ぬイノシシが増えたのでは」と県の担当者は言う。

 県は現在、CSFの感染が確認された地点から半径10キロ圏内は、イノシシを捕獲してもジビエとして処理しないよう自粛を要請している。イノシシを解体する時に流れる血や、残される骨などから、豚熱ウイルスが広がる可能性があるからだ。

 イノシシの捕獲頭数が減った上に、ジビエにする処理が止まったことで影響を受けたのが、ジビエの販売・飲食業者だ。

 ジビエとしてのイノシシ肉の流通が止まり、「打撃は大きく厳しい状態が続いている」と、愛知ジビエ振興協議会(名古屋市)の大西光夫事務局長は話す。当初は各業者が店に残る肉を売ってしのいだが、在庫が底をついた今は静岡県などからイノシシを入荷し、シカ肉の販売も増やしているという。

 地元で取れたイノシシを解体、販売していた豊田市足助地区の「猪鹿工房・山恵(やまけい)」。昨年6月、豊田市で野生イノシシへの感染が確認されたことで入荷が止まり、今年1月には在庫も尽きた。今は、他県から仕入れたイノシシのブロック肉を加工して販売している。

 仕入れ値はそれまでの2倍になった一方、販売価格に転嫁できないため利幅を減らし、採算ぎりぎりの状態だ。店長の鈴木良秋さん(68)は「今はつなぎの期間。何とかして乗り切るしかないと思っている」。

 知り合いの猟師からはイノシシを目にすることが減ったと聞いている。鈴木さんは「個体数は減っていると実感しているがまだわからない。いずれにせよ早く地元のイノシシが使える状態に戻ってほしい」と話す。(江向彩也夏、臼井昭仁)