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 新型コロナウイルスの感染終息の出口が見えない中、働く親を支えるため「原則開園」を求められた保育園が疲弊している。「1人の感染者も出さないように」と対策に追われるが、具体的な手立ては現場に丸投げされ、物資や人手が圧倒的に不足している。政府の緊急対応策も後手に回り、綱渡りで子どもを預かる保育士からは悲鳴が上がる。

尽きかける在庫、費用補助でも「モノがない」

 「消毒液を買おうにも、そもそも手に入らないのが現状。費用補助もいいが、まず現場に必要な物資を届けてほしい」

 横浜市の認可保育園「小雀(こすずめ)みどり保育園」の本間正理事長(68)は訴える。政府は10日、保育園などが消毒液などを購入した場合の費用補助などを盛り込んだ緊急対応策の第2弾をまとめたが、園内にある備蓄は残りわずか。すでに業者に発注しているものの、次に入手できるまでには「2週間ほどかかる」と言われている。

 政府は、保育園に対し、小中高校などで一斉休校をする間も、原則開園することを求めた。一方で、施設内の感染防止への取り組みや、職員に職場外でも感染拡大防止に努めるよう求める通知などを連日のように出す。園では、保育士の出勤時や保育室への入室時、おむつ替えの時などにアルコール消毒を徹底し、ドアノブや手すり、おもちゃなどもこまめに消毒。2月からは、子どもの送り迎えに来た保護者にも手指の消毒を徹底してもらうことにした。備蓄分を切らさないよう、掃除には水で薄めた塩素系漂白剤を代用するなどして間に合わせている。

 また、保育士が全員付けることにしたマスクも、一時は底をつきかけた。幸い、園の窮状を知った知人たちが寄付してくれたが、「厚意頼み」でやりくりしてきたのが実情だ。

保育士の使命、まっとうしたいが…

 さらに、感染を防ぐ「努力」は園外でも続く。

 保育園で働く28人の職員のうち、5人は電車やバスで通勤。乳幼児が集団生活を送る園内にウイルスを持ち込まないよう、感染リスクの高い人混みを避けてもらおうと、可能な限り午前7時から午後3時までの早番のシフトを割り振ったり、休んでもらったりしている。人手が足りない分は、出勤している保育士が残業をしてしのぐ。川辺初美園長(61)は「保育士たちは、園内で1人でも感染者が出れば保護者や子どもたちの生活を直撃するというプレッシャーを感じながら、毎日保育にあたっている。私生活でも緊張を強いられ、大きなストレスになっている」と打ち明ける。

 だが、そんな現場の切迫感が、むなしくなるような出来事があった。最寄りのJR大船駅で2月、駅を利用した女性客が新型コロナウイルスに感染していたことがわかったが、園が知ったのは翌日にニュースで報じられてから。その後も、国や市からの情報提供はなかった。

 保育主任の三浦加奈子さん(45)は「保育園の役割として、災害があろうと緊急時であろうと開園し、保護者を支えることの大切さはよくわかっている。とはいえ、現場を置き去りにしたままあれこれと要請ばかりする政府の対応には疑問を感じる」と話す。

トイレットペーパー求め行列に

 備品不足は各地で起きている。東京都内の認証保育園で園長を務める女性保育士(34)も「消毒液が手に入らないのが一番つらい。この状況が続けば、使用量を制限しなければならなくなるかもしれない」。このところのトイレットペーパー不足で一時は備蓄が切れそうになり、厳しい人繰りの中、女性自らドラッグストアに30分並んで購入した。

 全国の保育士らでつくる保育推進連盟には、全国の保育士から「万が一子どもが感染した場合、何も対策を取らなかったからだと(園を運営する)法人が責められるのでは」「行政は子どもの安全確保の責任を負わないのか」といった声が寄せられている。また、感染リスクと隣り合わせで保育を続けていることを踏まえ、「保育園を最後の砦(とりで)とするなら、保育従事者の地位を見直し、処遇改善を早急に行うべきだ」という意見もあった。

 連盟は政府に対し、消毒液などの衛生管理備品の確保や職員確保策の検討を要望。吉岡伸太郎副会長は「現場では本当に地獄のような対応を迫られている」とし、「国として最優先で対策してほしい」と訴えている。(伊藤舞虹)