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 春の甲子園から球音が消えることになった。第92回選抜高校野球大会(阪神甲子園球場)を主催する日本高校野球連盟と毎日新聞社は、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、19日開幕予定だった大会の中止を決めた。大会史上初の決断に、高校球児や関係者らは無念の思いをにじませた。

 東日本大震災から9年のこの日、21世紀枠で46年ぶりの出場だった磐城(福島)にも中止決定の知らせが届いた。

 選手19人全員が地元の中学出身で、多くが震災と原発事故で避難生活を経験。昨年10月には地元が台風19号による豪雨被害を受けた後、部員が復旧作業のボランティアに励んだことなどが評価され、21世紀枠での選出となった。木村保監督は「選手たちの取り組みが評価されて出場校に選ばれたことは事実。胸を張って、夏に甲子園の舞台に立てるよう努力していこうと伝えたい」と話した。

 平田(島根)は、未就学児への野球普及に取り組んでいる点などが評価され、21世紀枠に選ばれた。春夏通じて初の甲子園に挑む予定だった。

 県内に新型コロナウイルスの感染者が確認されていないことから、この日も練習を続けていた。中止を伝えられた選手たちは、目に涙を浮かべながら視線を落とした。保科陽太(ひなた)主将は「自分たちには夏があるので、もう一度甲子園の舞台に立てるよう頑張りたい」と振り絞るように答えた。

 野球部創部67年目で春夏通じて甲子園初出場を手にした鹿児島城西。かつてプロ野球ダイエー(現ソフトバンク)などで活躍した佐々木誠監督は就任3年目で甲子園への切符を手にした。グラウンドで取材に応じ、「希望はあった。でも、決まったことには従うしかない。初の甲子園が中止になるなんて、遠い聖地かな、と」と口にした。

 女子校からの共学化を経て、1996年に野球部を創部した加藤学園(静岡)も、春夏通じて初の甲子園に備えていた。勝又友則主将は「夏の甲子園にむけて、もう1回チームを作り直して取り組みたい」と前を向いた。

 選抜初出場の白樺学園(北海道)の戸出直樹監督は会見で「選手たちの思いを考えると非常に残念。人生の中でこういうことがあるが、つらいけれど乗り越えていく経験は大切な部分と思う」と話した。

 3年ぶりの出場が決まっていた仙台育英(宮城)は、田中祥都主将と須江航監督が取材に応じた。田中主将は「悔しさはあるけど、準備してきたことは無駄にならないし、(中止も)必要な経験と捉えている。夏に向けて、もう一度チームが一つの方向に向けるように、全員と話し合っていきたい」。須江監督は「心構えはできていたが、選手たちにかける言葉がない、というのが正直なところ。開催を信じて練習してきてくれたことをたたえ、背番号だけでも渡したい」と話した。

 41年ぶりに出場予定だった鶴岡東(山形)は、中止が伝えられた際に選手たちはすでに帰宅していた。記者会見で佐藤俊監督は「選手たちにどう声をかけるかはこれから考えたい」。その上で「選手たちと一緒に頑張って、夢や目標に向かって背中を押してあげたい」と語った。

 18年ぶりに出場予定だった尽誠学園(香川)は、同校で記者会見を開いた。「本当に残念。切り替えには時間がかかるかも知れないが、夏に向けてチーム全員でがんばりたい」。選手らは会見に参加せず、菊地柚(ゆず)主将のコメントを野球部長が読み上げた。西村太監督は「選手たちのショックを考えるとつらい。一人ひとりの思いをくみ取って心のケアをしたい」と話した。

 広島新庄の下志音主将は電話による代表取材に「中止になったのは残念だが、自分たちが見据えているのは最後の夏。今までの練習を夏につなげたい」と答えた。迫田守昭監督は「この数日間の状況を見ていたら仕方がない。選手たちは瞬間的に非常にがっかりした様子だったが、この経験を必ず今後の力にしてくれると確信している」と目を潤ませながら語った。

 倉敷商(岡山)は、梶山和洋監督が「多くの関係者の方々が『生徒の夢』のために様々な検討をしていただいたことに感謝しております。生徒とともに夏の選手権大会に向けて気持ちを切り替えて、努力をしたいと思います」とのコメントを発表した。梶山監督や原田将多主将は12日に報道陣に対応するという。

 6季連続の甲子園出場だった智弁和歌山は、中谷仁監督が報道陣の取材に応じた。「このメンバーで日本一を取りにいくんだという気持ちで練習していたので、非常に残念だが仕方ない部分もある。32校にしか感じられないこの悔しさを晴らすため、夏は甲子園に出なきゃいけないと選手たちと確認した」と語った。

 県岐阜商の鍛治舎巧監督は記者会見で「決断を重く受け止めないといけない。球児の夢をつぶしてしまった」と肩を落とした。部員には大会が開催される前提で練習に取り組むよう指導していたといい、「生徒にどう説明すればいいか言葉がまだ見つからない」と声を詰まらせた。

 記録に挑む機会を失ったチームもある。昨夏の全国選手権大会を制し、史上5校目となる甲子園の夏春連覇をめざしていた履正社(大阪)。岡田龍生監督は「これだけ感染者も増え、政府の方針もあり致し方ないのかなと思う。最後のチャンスである夏に向けて一日一日を大事に練習していこう、と選手たちに呼びかけたい」と次を見据えた。