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 中国の新型コロナウイルスへの対応を巡り、最初に感染が広がった湖北省武漢市の医師が初動の遅れなどをインタビューで告白したところ、記事がネットから削除された。怒った市民らが記事の転載を試みるも、当局の監視が強まる中国のSNSは禁止された言葉や画像が投稿できないシステムだ。一計を案じた市民らは、大胆な対抗手段に打って出た。

 きっかけは、共産党系の月刊誌「人物」が10日にサイト上で発表したインタビュー記事。武漢市中心病院救急科主任の艾芬医師が、12月下旬には救急患者からSARSに似たコロナウイルスの検出を確認したことや、別の医師から感染性が認められるとの報告を受けたことなどを告白した。

 艾氏は同30日に仲間に状況を伝えたが、1月1日に病院幹部に呼び出されて厳しく叱責(しっせき)され、その後は外に話せなくなったという。艾氏はインタビューの中で「後悔している」と何度も口にした。同病院には、艾氏と同様に未知の肺炎の拡大に警鐘を鳴らし、後に死亡した李文亮医師も勤めていた。

 艾氏の記事は当局に問題視された模様で、数時間後に削除された。だが、中国のSNS上で「また情報を隠すのか」などと不満が噴出。市民らは転載を試みたが、中国のSNSは当局の監視が年々強まり、禁止された言葉や画像が投稿できない仕組みになっている。

 このため、市民らは検閲をかいくぐるための対抗手段に出た。

 まず広がったのが英語や日本語、ドイツ語に翻訳された記事だ。これも間もなく削除され始まると、次に中国古代の甲骨文字や秦代以前に普及した篆書(てんしょ)体、毛沢東の書体をまねた記事が出回った。さらにはQRコードやバーコードで読み取ると読めるものや、モールス信号や点字に変換した記事も投稿された。ついには、白い文字で記され、一見判読できないが、背景や文字の色を反転させることで読める記事も登場。20種類以上の方法で記事がネット上に拡散された。

 反発の広がりに当局も慌てたのか、11日夜以降はほかのサイトに転載された記事は削除されなくなった。

 ネット上では「(李医師と)同じ悲劇を繰り返すな」「これ以上の言論封殺は許さない」などと当局への批判が続いている。これに対し、人民日報系の環球時報・胡錫進編集長は11日、SNSで「中国ではネット上に集まった意見は、削除されても政策には反映される」と冷静になるよう呼びかけた。(北京=冨名腰隆)