拡大する写真・図版個人の尊厳そしてソリダリティ(団結・連帯)の可能性を、足元から追求する=東京都新宿区、江口和貴撮影

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 「一生モノの課題図書」の帯が、書店で存在感を放つ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』。昨年から続くベストセラー快進撃は、著者のブレイディみかこさん自身を驚かせているそうです。共に生きることの意味を、さりげない筆致で深々と考えさせる書き手は、いかにして生まれたのか。英国からの帰国時に、たっぷりお聞きしました。

現代社会の「風景」を描く

 多様性ってやつは、ややこしい。でも楽ばっかりしてると無知になる――

 お説教臭い話も、この人にかかると、みんなが考え込まずにいられない魅惑的な問いに変身する。硬質でいてユーモラス、リズム感に満ち、時に先鋭的、時に詩情豊かな文体の力だ。

 昨年からベストセラーが続く『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』の舞台は英国の公立中学校。移民の増加や人種差別、貧困の問題が複雑に絡み合う中、一人息子とその友人たちはぶつかりあい、悩み、もがきながらも、乗り越えていく。

 「想定のないところから、ひゅっと答えを見つけてくる。『生きる英知』みたいなものに、むしろ私たち大人の方が教えられる気もします」

 欧州社会の変化の足元を伝えるコラムが注目されたのは数年前。行き当たりばったり、成り行きだと苦笑する。

拡大する写真・図版ブレイディみかこさん=2020年2月8日、江口和貴撮影

 1980年代初め。福岡県有数の進学高では、授業をさぼりバンド活動にいそしむ「不良」だった。英国のパンクロックにあこがれた。お昼のパンがろくに買えない貧しさを恥じ、ダイエット中でとおどける自分とは対照的に、海の向こうのスターたちは労働者階級の出身を誇りにしていた。

 大学へは進まず、バイトでお金をためて渡英を繰り返す。やがてアイルランド人の男性と結婚。英南部のブライトンで保育士をめざすのは、2000年代後半、40歳を過ぎて出産してから。それまで大嫌いだった子どもという生き物が、最高に面白くなった。

 貧困地域の慈善施設内にある無料託児所で見習いをし、底辺社会の現実を見た。暴力やドラッグや虐待が果てしなく連鎖する環境。自分を励ますために、ブログに文章を書き始めた。

 幼いころ通った託児所へ戻り、虐待が疑われる問題児と向き合って、たたかれたくなければ堂々としていなさい、と諭す女子学生のこと。

 不自由な体と心の病を抱えながら、凶暴児を受け止め、愚鈍なまでに実直な言葉でほめて、見事になつかせてしまう男性ボランティアのこと。

 いつか自分が物を書いていくかもしれないと「予感」した2編である。

 それらを収め、のちの保守党政権による緊縮財政の影を描いた『子どもたちの階級闘争』(17年)は高く評価された。著書は10冊超。論客としても期待されるが、そのつもりはない。

 「私がやりたいのは、主張でな…

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