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医の手帳・白内障(2)

 日本では年間100万件以上の白内障手術が行われます。顕微鏡を使うとても繊細な手術です。白内障は、放置するなど特殊な例を除けば基本的には失明する疾患ではありません。しかしWHOの資料によれば、全世界の失明人口は3700万人で、その原因の約半数は白内障です。日本では多くの施設で手術が可能ですが、発展途上国ではできないためです。

 その歴史は古く、紀元前800年ごろのインドに記録が残っています。日本には室町時代に伝わったようです。手術は、眼球に針を刺して、水晶体を包む囊(のう)ごと眼球内に落下させるものでした。現在から見ると非常に粗雑で、合併症が多かったのではないかと想定されます。その後、囊内摘出術という、水晶体囊ごと眼外に摘出する方法が考案されます。しかし、手術後は眼内にレンズがないので、強度の眼鏡やコンタクトレンズで矯正する必要がありました。

 そこで、水晶体のみを眼外に摘出し、水晶体囊は眼内に残すという囊外摘出術に発展します。残った水晶体囊に眼内レンズを挿入することが可能となり、手術後の視覚の質は格段に上がりました。現在は、水晶体を超音波で破砕、吸引する「超音波乳化吸引術+眼内レンズ挿入術」が一般的になり、さらなる安全性の向上につながっています。手術機器や器具、顕微鏡の発展で手術時間も短縮され、日帰り手術を行っている施設も多くあります。眼内レンズも着色レンズ、乱視矯正レンズ、先進医療にはなりますが多焦点レンズなど、患者さんのニーズに合わせて様々なものが開発されています。

 しかし、いかに手術が進化しても合併症がなくなるわけではありません。特に重篤な合併症の一つが感染症です。頻度は低いですが失明する可能性もあります。術後の合併症などの観点から、早期の段階で適切な処置が必要になるので、点眼や通院など医師の指示はきちんと守る必要があります。(新潟大学医歯学総合病院 松田英伸病院准教授(眼科))