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 米連邦準備制度理事会(FRB)は15日、緊急の連邦公開市場委員会(FOMC)を開き、リーマン・ショック後の2008年12月~15年12月以来となる「ゼロ金利」まで切り下げることを決めた。新型コロナウイルスの感染拡大による世界経済の減速を踏まえた措置で、米国債の購入拡大などを通じた「量的緩和」も再開する。

 また、日米欧など六つの中央銀行が協調して、世界中で決済に使われるドル資金を融通し合う協定を通じ、ドル資金の大量供給にも踏み出す。世界の金融機関の資金繰りを潤沢に保ち、危機を金融システムに波及させないのが狙い。08年9月のリーマン・ショック直後と同様の措置で、記者会見したパウエル議長は「海外でのドル資金の資金繰りの緊張が、米国でも金融環境に混乱をもたらしかねない」と危機感を示した。

 市場では、17~18日に予定していた定例のFOMCでの大幅利下げが見込まれていたが、FRBはそれを待たず、FOMCを前倒し開催して緊急利下げした。パウエル氏は会見で「この(ゼロ金利レベルの)金利水準を、経済が最近の(感染拡大に関わる)事象を乗り越えたと確信できるまで続ける」と予告した。

 世界的な感染拡大で人々の移動は制限され、消費や経済活動は物理的に制約されつつある。企業は売り上げが減るが、家賃や人件費などの固定費はかかり、体力の弱い企業は資金繰りが行き詰まりやすい。FRBは、危機が金融システムへの不安に拡大するのを恐れている。

 FRBはリーマン後の金融緩和からの「正常化」に向け、17年10月~19年8月、保有資産を縮小。しかし、今月3日の緊急利下げ以降、銀行が担保に差し出した米国債などを一定期間で売り戻すことを条件に資金を供給する「レポ」と呼ばれる取引を通じ、銀行間でお金を貸し借りする短期金融市場に大量の資金を供給した。今回の「量的緩和」で、さらに一歩進んで、需要底上げも狙う積極的な資産拡大に転じた。

 今後数カ月間は、米国債を少なくとも5千億ドル(約53兆円)、住宅ローン担保証券(MBS)を2千億ドル買い入れてFRBの資産を増やし、市場に大量の資金を供給する。

 FRBは3日の緊急利下げで、政策金利の誘導目標を「0・50%幅」と通例の2倍の規模で下げ、「年1・00~1・25%」とした。しかし、米株式市場の急落はその後さらに拍車がかかった。すでに米国でも金利水準は相当に低く、利下げ効果の限界がかえって強く意識される結果となっていた。15日の緊急利下げでは、政策金利の誘導目標を「1・00%幅」下げ、「0%~0・25%」とする。

 FRBやパウエル氏に金融緩和を求め続けてきたトランプ米大統領は、15日の会見で今回の利下げに触れ「とても幸せだ」と発言。しかし、今回、FRBが一気にゼロ金利に回帰したことで、今後の金利政策の余地はほぼなくなり、金融政策でさらなるショックを和らげる手立ては大きな限界に直面したことになる。(ワシントン=青山直篤)