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 自宅にいなきゃいけない中高生のみなさんへ。

 新型コロナウイルスの感染拡大により、とつぜん学校が休みになり、時間をもてあましている人も多いと思います。先生が急ごしらえで出してくれた宿題も終わり、図書館が閉まっていて本も借りられず、やることもない……。そんなみなさんのために、自宅で見られる映画を、評論家ら9人が選びました。パンデミックと呼ばれるいまの状況を予言したような名作から、10代にこそ見てほしい青春群像までさまざまです。レンタルDVDや、動画配信サービスなどで探してみてください。誰もが知っている大作ばかりではありませんが、この中にはきっと、みなさんの心に響く作品があるはずです。

「CURE」(1997年、黒沢清監督)

拡大する写真・図版「CURE」 DVD¥2800+税/発売元・販売元 株式会社KADOKAWA

 高校生の頃、深夜のテレビでは様々な映画が放映されていた。ゴールデンタイムで流れるハリウッド映画とは少し毛色の違う、ヨーロッパやアジア各国のいわゆるアート映画。ときには白黒の古典映画もあった。映画のネット配信などもちろんまだなかった時代。そうした映画をVHSに録画し手当たり次第見ていくのが、当時の私の日課だった。

 黒沢清監督の「CURE」と出会ったのも、やはり深夜のテレビでのこと。まだ黒沢監督の名前も知らなかった高校生の私は、録画したこの映画を見て、ただもう呆然(ぼうぜん)としてしまった。こんな映画は見たことがなかった。謎の連続殺人事件を追うひとりの刑事がいる。ある日突然、何の予兆もなく、殺人や自殺に駆り立てられる“普通の”人々。彼らをつなぐ線を探るうち、刑事は、名前も住所も年齢もすべてが不明だという謎の男の存在に行き着く。

拡大する写真・図版黒沢清監督

 陰鬱(いんうつ)な画面と強い風の音が、ぞくぞくとした怖気(おじげ)を搔(か)き立てる。黒沢清の映画の定番ともいえる廃虚も、だだっぴろい病室も、警察の取調室も、すべてが暗い影に覆われ、主人公が住む一見普通のマンションすらも、ここではないどこか異様な場所に見えた。

 「俺、あんたの話が聞きたい」。萩原聖人演じる謎の男は、誰に対してもそうつぶやき返す。その声に促されるように、役所広司演じる刑事は闇の奥へと誘われる。もはや連続殺人事件の真相などどこかへ行ってしまうほど、彼が追う謎はより根源的なものに変化していく。

 VHSに録画したこの映画を、何度も何度も見直した。それまで見ていた、派手な音楽や描写で驚かすホラー映画とはまったく別ものだった。漠然と持っていた「世界観」とでも呼ぶべきものが、足下からがらがらと崩れていくような気がした。自分が信じていた世界は、実はまったく別の姿を持っていたのではないか? そもそも世界とはいったい何なのか?

 こうして私は映画という魔に取り憑(つ)かれた。「CURE」はそんな記念すべき一本だ。(月永理絵・映画ライター)

 「レポマン」(1984年、アレックス・コックス監督)

拡大する写真・図版「レポマン」ブルーレイ発売中/KIXF-4380/¥2,500+税 発売・販売:キングレコード

 巷(ちまた)では伝染病が流行し、狭いところに閉じ込められて、ひたすら閉塞(へいそく)感ばかりの昨今。閉所恐怖的な息苦しさの中で生きることに、みないいかげんうんざりしている。終末は終末でも、どうせなら明るく楽しく向こう側へ突き抜けた終わりでありたいものじゃないか。だから「レポマン」である。レポマンは自動車泥棒だ。ただし、それは犯罪ではない。債権会社に雇われ、ローンを払わない人間から強引に車を回収するレポマンは正義のアウトローなのである。ひょんなことからその世界に飛び込んだ若者オットーの前に、めくるめく冒険の世界が広がる。オットーは世界を揺るがす秘密を秘めた車を「回収」することになり……レポマンの生活はいつだって濃密なのだ。世界の向こう側までぶっとばせ。(柳下毅一郎・映画評論家)

「日本沈没」(1973年、森谷司郎監督)

拡大する写真・図版「【東宝特撮Blu-rayセレクション】日本沈没」 Blu-ray発売中 発売・販売元:東宝

 1958年夏。パリ、サンジェルマン・デ・プレの小さな映画館。多国籍製作の黒白ドキュメンタリー「害虫と人間」を見る。戦争が終わり、兵士が持ち帰ったノミや虱(シラミ)は、殺虫剤を強くするほどに数が増え、人間は死に、害虫だけが生き残る。寄せ集めの映像の主題は、未来への強烈な予告であった。お薦めの一作は、この路線を受け継いだ「日本沈没」(73年)。原作小松左京、脚本橋本忍、監督森谷司郎。主題は更に広がり、地球・自然・人類、政治と多くの問題を提起する。カンヌ国際映画祭に推薦、一蹴される。芸術作品にあらずと。しかし、映画は予感する。95年、2011年の地震、津波、原発事故。そして20年のコロナウイルスまでも。今を生きる10代の鋭い感性に響く何かはあると思う。(秦早穂子・映画評論家)

「カサンドラ・クロス」(1976年、ジョルジ・パン・コスマトス監督)

拡大する写真・図版「カサンドラ・クロス」 ブルーレイ発売中/KIXF-4302/¥2500+税 発売・販売:キングレコード

 病原菌に感染した過激派がヨー…

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