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 新型コロナウイルスの感染が拡大するなか、国と国の間で人の移動を制限する動きが出ています。なかでも注目は、互いに自由な行き来を保障する「シェンゲン協定」に加盟する欧州の26カ国の行動です。この協定は欧州統合の象徴と言われる一方、近年はテロや難民の問題でも危機を迎えています。背景にある考え方や課題について、欧州の政治に詳しい国学院大学法学部の佐藤俊輔専任講師に聞きました。

 ――シェンゲン協定とはどんな取り決めですか

 欧州連合(EU)にとって人の移動の自由は大切な基本理念の一つですが、それを支えているのがシェンゲン協定です。

 そもそもは1985年、EUの前身の欧州経済共同体に加盟する西ドイツ、フランス、ベルギー、オランダ、ルクセンブルクの5カ国で、人の自由な移動を定めた協定を結んだのが始まりです。域内の自由移動を進め、経済的な結びつきを強めるため、西ドイツのコール首相と、フランスのミッテラン大統領が主導しました。ちなみにシェンゲンはルクセンブルクの小さな町の名前です。

 加盟国間での調整の末、95年になってようやく実施されます。翌年までにはイタリア、スペイン、ギリシャなどを加えた13カ国に拡大し、97年のアムステルダム条約で正式にEUの法体系に組み込まれました。現在は26カ国にまで広がり、これらの国の間を行き来する時は原則としてパスポートのチェックを受ける必要がありません。共通通貨ユーロとならんで、欧州統合の最大の成果とされています。

 ――EUに入っていない国も条約に加盟しています。

 アイスランドやノルウェーはEU非加盟ですが、シェンゲン協定に含まれます。もともと、北方諸国の間で相互に自由な渡航を認めていたという事情があります。逆に、キプロス、クロアチア、ルーマニア、ブルガリアなどはEU加盟国ですが、シェンゲン協定に未参加です。

 ――1月末でEUを離脱した英国も初めから参加していませんでした。

 大陸と海を隔てた島国だからでしょうか。かつてのサッチャー英首相は、国境をなくしたひと続きの欧州を強く警戒していたといいます。EUの前身の欧州共同体のような「超国家」の存在に対しても懐疑的でした。

 実際、国境を開放することで、労働者の流入や治安の悪化という懸念が浮上します。英国の場合はこれがのちの、EU離脱の主な要因となりました。

 ――新型コロナウイルスの拡大で、まずオーストリアやスロベニアがイタリアからの入国を制限しました。

 実はシェンゲン協定では、緊急の状況や深刻な脅威がある場合、最大半年間の一時的な国境管理の再導入が認められています。今回も、この規定が適用されました。ただ、こうした例外がすでに常態化しているところもあります。

 ――どういうことですか。

 フランスでは2015年に発生…

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