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 高齢化に伴い誤嚥(ごえん)性肺炎で死亡するお年寄りが急増している。のみくだす力が低下、細菌が気管経由で肺を襲う。誤嚥を抑え、自分で食べられるようにしてあげたい。そんな思いで群馬県高崎市の中小企業が、訓練機器の販売に乗り出した。

 前橋市岩神町2丁目にある特別養護老人ホーム「ルネス前橋」。機能訓練指導員の女性が、4枚のパッドを入所者の男性(85)の首につけた。機器のスイッチを押すと、電気が流れる。表面と奥の筋肉に電気を流して刺激することで筋肉が鍛えられ、食物や唾液(だえき)などが気管に入るのを抑制できるという。

 男性は入所前は自分の口で食事ができず、胃へのカテーテルで栄養を摂取していた。いまはペースト状なら口で食べられるようになった。指導員は「これを使うと、声がよく出るようになり、話が聞きやすくなった」と説明する。男性は「初めてつけた時は痛かったが、今は痛くない。よくなったかどうか自分ではよくわからない」と話す。

 開所してから5年となるルネス前橋では、数人が誤嚥性肺炎で亡くなったという。防止策の一環として昨年11月、訓練機器を導入した。70人の入所者の多くは80代半ば。現在は3人が、ほぼ毎日1回20分、訓練機器を使っている。

 別の男性は、食事をうまくのみこめなかったが、訓練後はスムーズにのみこめるようになったという。副施設長の青木鈴子さん(67)は「自分の口で食べられることが幸せ。食べる楽しみが一番大事で、健康のみなもと」と語る。職員に操作方法を学ばせて「誤嚥防止のほか足腰の筋力回復など多くの人が活用できるようにしたい」という。

 厚生労働省によると、誤嚥性肺炎による死亡者数は、1995年に3580人だったのが、2018年には3万8460人と10倍以上となった。75歳以上が94%を占め、85~94歳が2万669人で全体の過半数となっている。

 健康機器のリッコー(東京都中央区)が開発した訓練機器「エクスケアDi」(35万円)を販売するのは、健康枕の製造販売をする「プレジール」(高崎市中尾町)。登坂好正社長(66)が4年前、食べるのに往生していた入院患者が自力で食べられるようになった大学病院での臨床実験映像を見たのが販売に乗り出したきっかけ。これまでに約400台が売れたという。登坂社長は「誤嚥予防に限らず、寝たきりの人の回復に少しでも役立てたらうれしい」と話す。(野口拓朗)