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 中年以降の女性に多い病気の一つに骨盤臓器脱があります。

 通常骨盤内にある臓器の子宮や膀胱(ぼうこう)、直腸は、筋肉やじん帯などに支えられて位置を保っています。しかし、妊娠・出産で骨盤底筋が損傷を受けると臓器の支えが緩み、だんだんに位置が下がってきてしまいます。これが骨盤臓器脱です。肥満や便秘、慢性的なせきなども助長因子となります。程度は様々ですが、子宮や膀胱が膣(ちつ)から完全に飛び出す場合もあります。以前は子宮脱、膀胱脱、直腸脱などと呼ばれていましたが、まとめて骨盤臓器脱と言うようになっています。

 骨盤臓器脱の症状には、陰部の異物感(股に何かが挟まっているような感じ)や下垂感(何かが下がってくるような感じ)、トイレが近い、尿が出しづらい、尿漏れ、便秘などがあります。入浴中に膣からピンポン球のようなものが出てきたと言って気づく場合もあります。通常寝ているときは脱出してこないため症状は良くなります。長時間の立ち仕事や歩行後、あるいは午後になると症状が強くなります。

 検査では、はじめに問診を行います。いつごろからどんな症状があったか、妊娠・出産歴、のんでいる薬、今までどのような病気で治療をしたか、などを尋ねます。次に内診台での診察を行います。わざとせきをしたり、いきんだりしてもらって、骨盤臓器脱の種類や程度を確認します。

 さらに、尿検査で血尿や炎症、超音波検査で残尿量のチェックを行います。膀胱の造影検査や膀胱鏡検査、MRI検査などの検査を行うこともあります。

 骨盤臓器脱の治療には、大きく分けて保存的治療と手術療法の二つがあります。

 【保存的治療】

 ①骨盤底筋体操

 軽症の場合には骨盤底筋訓練で骨盤底筋を鍛えて強くすることで、骨盤臓器脱の進行の予防や尿失禁の改善などを図ります。合併症や副作用はありませんが、3カ月以上の継続が必要で、即効性はありません。

 ②ペッサリーリング

 膣の中にペッサリーという、7~8センチのリングを入れて骨盤内の臓器が下がってくることを防ぐ治療です。骨盤臓器脱を完全に治す方法ではありません。おりもの、出血、違和感が出たり、膣粘膜の炎症が起きたりしやすくなるため、定期的な通院や交換が必要になります。

 【手術療法】

 骨盤臓器脱が中程度以上や症状が強い場合、保存的治療で良くならない場合には、手術療法が選択されます。

 ①従来の方法

 従来多く行われてきたのは、膣から手術を行う方法です。子宮を摘出し、膣の壁を縫い縮めて補強しますが、もともと弱くなっている組織を使用するため、再発率が約30%と高いと言われています。

 ②経膣メッシュ手術

 メッシュと呼ばれる網目状のシートを膣と膀胱、または膣と直腸の間に入れ、臓器を本来の場所に戻し、再び下がってこないようにする方法です。同様にメッシュを用いる手術の代表例として鼠径(そけい)ヘルニア(いわゆる脱腸)の手術があります。子宮を摘出しないため、体への負担がより少ないと考えられます。

 ③腹腔(ふくくう)鏡手術

 腹腔鏡を用いておなかの中からメッシュを入れて、骨盤臓器脱を治療する方法です。膣からの手術に比べて、手術時間はやや長いものの、膣粘膜の炎症や感染、痛みなどメッシュ関連の合併症は少ないといわれています。

 骨盤臓器脱は直接命にかかわる病気ではありませんが、生活の質には大きく影響する場合があります。どの治療方法を行うかについては、骨盤臓器脱の種類や程度、症状、生活スタイルなどを総合的に判断し、患者さんと相談のうえ決めていきます。困ったときには恥ずかしがらずにご相談ください。

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 弘前大学企画連載は今回で終了します。長い間ご愛読くださり、ありがとうございました。(弘前大学大学院医学研究科先進移植再生医学講座准教授 米山高弘)