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 ミットをにらむ眼光に、気の強さが表れている。

 ルーキーの坂本裕哉。苦笑いしながら言った。

 「負けず嫌いだけでここまでやってきたようなもの。控えめ(な性格)と言われたことはないです」

 立命館大3年時、次年のドラフト候補を紹介する記事に自分の名前が見当たらない。並ぶ同世代の顔を見て、左腕は心の中で誓う。

 「全員抜いたんねん!」

 冬、体を徹底的に鍛えた。体重は10キロ増え、4年時のリーグ戦で春秋ともに5勝と飛躍。ベイスターズから2位指名を受け、プロの夢をかなえさせた。

 入団後も萎縮とは無縁。いや、負けん気が顔を出す機会はむしろ増えたか。

 キャンプ中、ラミレス監督が球速アップの必要性を指摘すると、1日、西武とのオープン戦で151キロの自己最速を出した。その試合の初回に直球ばかりを投げたのも、「最初から変化球で『逃げ逃げ』の投球はしたくなかった」からだ。

 力試しは3回3失点に終わり、監督には「いまは結果でアピールすべき立場」と直々に苦言を呈された。だが、勝ち気に挑んだからこそ、ある実感を得た。

 「『やっぱり(球速が)上がるんや』と。プロに入って、すごく質のいいトレーニングができている成果。『絶対に球が良くなるな』と思いながら練習できています」

 キャンプは同期入団で唯一、1軍で完走。実績の豊富な選手ほど努力を怠らない事実を目の当たりにし、真理らしきものを悟る。

 「人間力は技術向上に直結している。野球で成功する人はきっと、何をやっても成功するんじゃないか」

 手本となったのは、四つ年上の今永昇太だ。交わした言葉の多くが「名言」となって心に残った。

 あるとき坂本は、ひもをほどかずにシューズを脱いだ。「めんどくさがり」の一面がふと表れた瞬間を、今永は見逃さなかった。

 「細かいけど、ひもを緩めてから丁寧に脱ごう。足元を大切にしないと、いいピッチャーになれないぞ」

 心身ともに日々成長を感じられるから、先発ローテーション争いの当落線上ながら「ここまでは順調」と強がりでなく言える。

 開幕延期も「アピールの機会や準備する時間が増える」と前向きに捉える。滑走路は伸びたのだ。13日の日本ハム戦は4回零封。離陸のときへ、加速はついた。

 開幕よ、早く。強気な22歳が高く飛び立つさまを、公式戦でぜひ見たい。(横浜DeNAベイスターズ公認ライター・日比野恭三)