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 ローマ・カトリック教会のトップとして38年ぶりに訪日したフランシスコ教皇が、長崎県営野球場(長崎市)でのミサに姿をあらわした。2019年11月24日のことだ。スタジアムを埋め尽くす3万人ほどの参列者の間を進む教皇が乗っていたのは、真っ白なオープンカー。「パパモービレ」と呼ばれている教皇専用車だった。

 提供したのはトヨタ自動車。燃料電池車(FCV)「ミライ」を教皇用に改造した特別仕様だ。燃料は水素で、空気中の酸素との化学反応でつくった電気で走る。排出するのは水だけで、二酸化炭素を出さない。

 「人類は温暖化と闘うため、生産と消費の変化を求められています」。カトリック最重要文書である回勅「ラウダート・シ」(15年)でこう訴えるほど環境への関心が高いこの教皇の移動車として選ばれたのがミライだった。トヨタの開発責任者、田中義和氏は「地球の未来のために気合を入れてがんばろうと思った」。

 1970年代に米国の排ガス規制対応でホンダに後れをとった反省から、トヨタは「環境」を経営の重要課題に位置づけた。97年には世界初の量産ハイブリッド車(HV)のプリウスを売り出し、エコカーのジャンルを開拓。そんなトヨタが14年12月、「究極のエコカー」として発売したのがミライだ。水素の補充は1回3分で、約650キロ走ることができる。ただ、価格も723万円(当時)と破格だった。

 背中を押したのが政府だ。水素は車の燃料だけでなく電力などのエネルギー源としても活用でき、化石燃料の依存度を下げるエネルギー安全保障に役立つ。「水素社会の実現」を長年掲げてきた政府にとって、ミライは水素政策の要ともいえる。14年の発売直後、官邸に出向いた豊田章男社長からミライのキーを手渡された安倍晋三首相は「いよいよ、水素時代の幕開けだ」と応じた。国は、ミライの購入者に対し、1台202万円の補助金を支給している。

 だが、その後のミライは低迷がつづく。5年間の世界販売台数は累計約1万台で、日本国内は3400台ほど。政府が17年の水素基本戦略で掲げたFCVの累計の販売台数の目標は「20年までに4万台程度」。現状は10分の1にも満たない。トヨタの田中氏は「ぎりぎり踏ん張っている状態」と明かす。

 高価な車両価格に加え、普及の…

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