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 2月27日夜、安倍晋三首相は新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ目的で、全国の学校に翌週から一斉に休校するよう要請しました。ちょうど進学・進級の節目を迎える時期でした。それから3週間。生活の変更を迫られた子どもたちはどう過ごしているのでしょう。親と子、それを支える人たちの声を聞きました。

あさのあつこさん「大人の言葉うのみにせず、考えてみて」

 日本中の多くの学校が、突然お休みになりました。卒業や学年が上がる直前の3月に、自分でちゃんとお別れができず、友達と急に断ち切られてしまった人もいるでしょう。学校で勉強するはずだった多くの時間も奪われてしまいました。

 当たり前に続くと思っていた日常が突然くるっと変わる、あるいは消えてしまう。このことを、みなさんにはじっくり考えてほしいのです。それも個人の事情じゃなく、国や社会の事情で変わってしまうことがあるんだ、ということを。

 だからこそわたしは、みなさんが主体的にこの時期を生きてほしいと思います。自分が何をしたくて、何をするべきで、何をしたらいけないのか。大人たちの言うことを全部うのみにするのでなく、自分で考えて動いてください。

 「別れちゃう友達がいるから、どうしても会いたい」と感じるなら、会いに行ってもいい。その場合は、手洗いをちゃんとしようとか、少しせきが出ているから今日はやめようとか、考えてみましょう。そして自分が動ける範囲で動く、ということをやってみてください。

 いま世の中にはいやな空気があふれています。トイレットペーパーを買い込んだり、マスクをせずに街を歩く人を「非常識だ」と言ってみたり、デマや不正確な病気の情報に右往左往したり。これはウイルスのせいだと思いますか?

 実はわたしには、今まで見えづらかった弱点や短所が、はっきり表れてしまっただけに思われます。「わたしとあなたはちがう」「ちがうから敵だ」「ちがうから許さない」。そう言って相手を攻撃して安心するのは、大人の社会だけでしょうか。学校ではなかったでしょうか。しかしそんな言葉は、今のような状況を悪くしても、良くすることはありません。

 でも、もしかするとこれはチャンスかもしれません。

 大人は大きな出来事があると騒ぎ、過ぎればすぐ忘れてしまいます。でもみなさんには、一人ひとりの身に降りかかったことを覚えておいてほしい。

 友達と会えない悲しみ、学校から解放された喜び、ドタバタする大人を見てうんざりした気持ち、医療現場などで必死に働く大人をすごいと思った気持ち。自分の言葉で友達や家族、大人たちに話してみてください。なぜならそれが、あなたたちが大人になった時、こんな騒動や危機を起こさない力になるからです。世の中を変える力になるからです。

 わたしたち大人も、この騒動が一段落した後、「命を守るため」という言葉の下に子どもたちに何をしたのか、ちゃんと検証しなければいけないと思います。(聞き手・藤田さつき)

眠れない 友達と楽しむ

 フォーラムや、悩み・疑問を募って取材する「#ニュース4U」に集まった声を紹介します。

●眠れなくなった

 眠れなくなり、困りました。

 片道30分の徒歩通学や体育がなくなり、エネルギーの使いどころがなく、夜中に何度も目が覚めてきついです。自宅でちょこちょこ動くくらいでは足りないです。友人とは面倒なので全く連絡をとっていません。(東京都・中学2年女子)

●友達との思い出づくり

 休校と言われた後、家から出ちゃいけないかと思って、合格した高校から出た宿題を家でやっていました。でも考えてみると、入試が終わり合格も出る前にいきなり休校になって、卒業までに友達と楽しめるはずだったことが何もできないことが悔しくて……。結局、みんなと連絡とって遊びに行きました。友達との思い出作りも私には大切な時間だから。(東京都・中学3年女子)

●疾患ある子への配慮も

 普段はほかの子と変わらず元気に過ごしている息子ですが、幼いころから慢性疾患があり、今回も感染すれば重症になるリスクがあります。学校があればみんなと同じように登校したがるので、休校になってほっとし、自宅にいます。でも、周囲やネット上には「居場所がない」「早く学校再開を」などの声があふれている。私も働いているので預かり先がない家庭の大変さもわかりますが、すぐ隣にハイリスクな子がいるかもしれないということにも少し思いを寄せてもらえたら。(東京都・30代女性)

●勉強の遅れ取り戻す

 休校前は部活が忙しくあまり勉強時間を確保できなかったので、この機会に遅れを取り戻そうと気合を入れて勉強しています。午前8時ごろからオンライン学習サービスを活用して、休憩も挟みつつ1日約10時間は勉強。学校でみんなと授業を受けることはできませんが、その分家で1人で苦手科目を徹底的にできるのは良いと思ってます。寂しくなったら友だちとラインしたり、昼ごろには陸上部の自主練を兼ねて近所を走ったり。来年に大学受験を控え、大学のリサーチも始めました。友だちに会えないのは少し寂しいですが、ピンチをチャンスにできるように頑張りたいです。(神奈川県・高校2年男子)

●自閉症の子、睡眠障害やパニック

 自閉症の小5の息子が通う専門学級も休み。見通しを持つのが苦手なので、学校の決まったリズムがなくなると、睡眠障害やパニックを起こしてしまい苦しそう。一緒に家で過ごす妹のストレスもたまっています。放課後デイサービスが開き続けてくれているのが救いで、なんとか頑張れています。(東京都・40代女性)

●保育士不足 いつも以上に深刻

 学校や幼稚園は休校・休園になっても、保育所の運営は通常通り。小学生の子どもがいる保育士は出勤できず、保育現場の人手不足は普段に増して深刻です。自宅のマスク買い置きも底を突きました。いつ、園内で感染者が出るかと職員みんなストレスに押しつぶされそうです。(岐阜県・56歳女性)

●最後になったランドセル姿

 休校期間直前の2月28日朝、登校する小学6年のひとり息子のランドセル姿を写真におさめました。小学校の6年間がブッツリと途中で切られてしまった感じで、息子は同級生と号泣したそうです。

 私は専業主婦で休校期間中を家で子どもとどのように過ごすか頭を悩ませています。ゲーム以外のことに関心を向けさせて長い休みを有効に過ごさせたいです。息子はスポーツクラブでラグビーをやっていて、土日は規模を縮小して少人数で近くの公園で練習があるので気分転換と運動不足の解消になっています。

 卒業式は今月24日、在校生は参加せず行われます。卒業証書授与のお辞儀や歩き方、手の出し方を練習して迎えようと思います。(東京都・50代主婦)

●「仮想通貨」でお手伝い加速

 小3の長男と小1の長女がいます。ジグソーパズルや理科の実験など時間がかかるものに取り組んでいますが、せっかく家にいるのでこの際もっと家のお手伝いもしてほしい。そこでお手伝いのご褒美に、私の名前をもじって作った家庭内の仮想通貨「momo pay」を導入しました。洗濯物を干すと20ポイント、食後の食器の片付けは10ポイントなど。ポイントがたまれば現金化もできるし、10ポイント1分としてゲームをできる時間の延長にも充てられるようにしました。そろそろ無駄遣いも含めてお金の使い方を学んでほしい時期。自由に外出できるようになった時のお楽しみとして、2人とも頑張ってポイントを集めています。(千葉県・44歳女性)

●ママ友と交代で見守り

 小2と5歳の息子がいます。編集ライターの在宅ワークをしていますが、子どもに話しかけられるとはかどらない。お昼を食べた後は祖母の家に遊びに行かせ、週に何回かは友だちと公園で遊ぶ約束をして、お母さん同士交代で見守って乗り切ろうと思います。(川崎市・30代女性)

●いばらの道とわかっているが

 学童保育は、お父さんお母さんも困っているし、子どもたちのためにも「いばらの道だけど開けるしかない」という気持ちでやっています。子どもたちは休校期間が始まった最初の数日は高揚感があったようですが、外遊びを午後3時以降としていることなどもあり、徐々にストレスがたまっている様子です。

(東京都・NPO法人Chance For All代表・中山勇魚)

ひとり親家庭 支援ストップ

 静岡市では3月中の、ひとり親や生活困窮世帯の子どもを対象にした学習支援、大学生派遣(ホームフレンド)事業が、コロナウイルスの感染拡大防止のために中止となりました。同市葵区で中2の長女、小4の長男と3人暮らしの女性(43)は「こういう時だからこそ、利用したかった」と話します。

 女性は夫と死別後、理学療法士としてパートで働き、子どもを育ててきました。突然の休校措置に驚いたものの、「親が働き続けるために、子どもに学校に行ってもらわねば、という発想はちょっと違うな」と思い直しました。長女がぜんそく気味でもあり、休校中は学童保育も利用せず、2人で留守番させました。

 普段は長女が週1回、公民館などで大学生にマンツーマンで勉強を教わり、長男は家に来てくれる大学生と遊んでいます。二つの事業が中止となって、休校中の2人の日々は「主にユーチューブとゲーム」。午前中は勉強もしたけれど、午後は時間を持てあます。特に長男は、担任の「必要のない外出は控える」という注意を守り、ほぼ家から出ませんでした。

 長男は大学生に借りたフライングディスクを「返せない、つまんない」と言って室内で投げていました。運動不足を解消しようと、女性が河川敷に連れ出し一緒に走ると、「フレンドさんなら、もっと速いのになあ」。

 NPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」の赤石千衣子理事長は「ひとり親家庭からは『子どもが一人では勉強できない』『生活リズムが崩れて心配』という声を聞いている。こういうときこそ、学習支援があるとありがたい。訪問が無理ならオンラインなどあらゆるやり方を試してほしい」と指摘します。(阿久沢悦子)

私語厳禁の教室「もう嫌」

 埼玉県の大川麻友さん(33)の長女(7)は小学1年生。学校は、休校中も低学年の児童を一時預かりで受け入れてくれます。しかし、休校初日の今月2日、長女は帰宅するなり「いつもの学校じゃない。もう行きたくない」と訴えました。

 学校では、自分で持ってきた教材で自習するよう指示されました。私語厳禁で先生と話すことも許されず、立ち歩けるのはトイレに行くときだけ。友だちとおしゃべりすると先生に注意され、長女はショックを受けたようでした。

 大川さんは、パートで医療関係の仕事をしています。長女を1人で留守番させるわけにもいきません。

 休校2週目の9日朝。長女は家のドアにしがみつき「やだやだ」と激しく抵抗しました。大川さんは「なるべく早く帰ってくるから」と約束し、なんとか学校に送りました。

 結局、この週の午後はほとんど仕事を休み、長女と過ごしました。休校当初は校庭で遊べず、公園にも行きにくく、家の前で縄跳びやかけっこをして体を動かしていました。大川さんは「3月はかなり収入が減るけど、お金は二の次。今は子どもの精神的安定が最優先です」。

 図工が好きな長女は、工作のために家で集めたプリンの容器を使うのを楽しみにしていましたが、それも無駄に。バレエや習字の習い事もお休み。校庭の鉄棒で練習中だった逆上がりの補助板も使えなくなってしまいました。

 大川さんは「ささいなことかもしれないけど、日々のちょっとした楽しみが取られてしまった」と感じています。支払い済みの給食費や習い事の月謝に加え、自習用のドリルや外遊び道具など、新たな出費もかさんでいます。(村井七緒子)

「どこも行く所ない」と来校

 東京都内の公立中の3年生の担任の男性教諭(30)は、休校後も毎日学校に出て、休校延長の場合の対応、規制がある場合と解除された場合の卒業式のやり方など、いくつもの準備に追われました。

 仕事をしていると、生徒たちが「どこも行くところがない」と、ちょこちょこ学校に顔を出します。「こんなに居場所がないんだなあーと思いました」と教諭は言います。同時に、学校が居場所の子が予想以上に多いことも感じたようです。

 球技大会やお楽しみ会など、中学最後の行事も次々と中止になりました。卒業したら高校もバラバラになるから、集まりたいという子たちも。校長が「校庭でなら遊んでいい」と開放してくれて、ぽつぽつと来た生徒たちと、教諭も一緒にスポーツを楽しみました。

 「本当は家庭に居場所があるのが子どもには一番だとは思う」と教諭。「でも、大人も日々ギリギリで頑張り過ぎているから、余裕が持てない。この休校で日本社会のあり方を考え直したら、子どもの居場所もできるのでは」と話していました。(宮坂麻子)

小中校生の相談先・居場所も

 休校で生活が変化する子どもたちを支えようとする団体もあります。

 18歳以下のための相談窓口「チャイルドライン」は今月初め、ホームページに「いま皆さんはいろんな気持ちを抱えていると思います。そんな皆さんの大切な気持ちをぜひ、聴かせてくださいね」とメッセージを掲載しました。

 チャイルドライン実施団体は全国に68ありますが、うち8団体分だけでも休校関連の相談は40件ほど来ています。子どもたちからは「卒業式がなくなった」「相談できる先生と急に会えなくなった」などの相談が寄せられています。

 進級や進学による環境の変化で、例年3~4月は相談件数が多い時期。チャイルドライン支援センター専務理事の高橋弘恵さんは「卒業式が中止になるなど、一部の子どもたちは区切りがつかないまま4月になります。自分の所属がはっきりしない中での生活で感じる不安もあると思います」とし、「我慢せず気持ちを伝えてほしい」と話します。

 電話相談は毎日午後4~9時(0120・99・7777)で受け付けている。

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 10代向けの相談窓口まとめサイト「Mex(ミークス)」を運営し、家庭に事情のある子の学習支援をするNPO法人3keysは、9日から中高生向けに東京都新宿区の事務所を臨時開放しています。代表の森山誉恵さんは「親との関係などから、家にいたくない子どもたちの学習環境を保障したかった」と話します。

 利用できるのは月曜日と水曜日の午前10時~午後4時。入室の際はマスクの着用や、アルコール消毒をお願いし、感染者が出た場合を考え連絡先などの情報を提供してもらうようにしています。同時利用はおよそ10人を想定していますが、現在は1日に2~3人が利用し、勉強をしたり友達同士でおしゃべりをしたりしているそうです。

 「子どもたちの中には『勉強がしたいけど、親や兄弟がいると集中できない』などの理由で来る子がいます。図書館のような利用をしてもらえれば」と森山さん。利用者が増えれば、利用条件を変更する場合があるそうです。問い合わせは3keysのメールまで(info@3keys.jp)。(金沢ひかり)

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山根久美子、波多野大介も担当しました。フォーラム面への感想やご提案はasahi_forum@asahi.comメールするでお待ちしています。