経世彩民 江渕崇の目
アメリカ経済が鼓動を打つのをやめたかのような静けさだ。ニューヨークでは飲食も娯楽も小売りも、目に見える形のビジネスが、あらかた止まった。そして州政府による外出禁止令が、22日午後8時に発効した。「生活に必要不可欠」とされた職種以外は、すべて在宅勤務が命じられた。終わりは見えない。
新型コロナウイルスの影響で、4~6月は30%のマイナス成長に――。米モルガン・スタンレーがはじいた予測だ。「マイナス3.0%」の書き間違いではない。2008年のリーマン・ショック直後ですらマイナス8.4%だった。米連邦準備制度理事会(FRB)幹部からは「マイナス50%成長、失業率30%」のシナリオも飛び出した。少なくとも数カ月単位で見れば、90年前の世界恐慌に匹敵する急失速のただなかに、私たちはいる。
この国が享受してきた株高という「金めっき」も、わずか1カ月でバリバリとはがれ落ちた。米国の資本主義は、その「地金」をさらけ出しつつある。
この間の株安を「ジェットコースター」と米メディアは言う。しかし、株価グラフを眺めると、上級者向けコースターですらもう少し手加減するだろうと思わせる、絶壁のような落ちっぷりである。幅広い経済活動が止まったのだから株安は当たり前だが、そもそも「元の山が高すぎた」のだ。
■減税も借金も「自社株買い」…