競馬場の宿舎が縁 稀勢の里の元付け人、厩務員に転身

有料記事

内田快
[PR]

スポーツ好奇心

 2019年11月、大相撲九州場所で1人の力士が引退した。しこ名は淡路海だった中尾尚弥さん(26)。最後の取組を終えた中尾さんは、元横綱稀勢の里の荒磯親方らから花束を渡され、涙ぐんでいた。それから4カ月。中尾さんの姿は兵庫県の山あいにあった。

 「淡路海くん!」。案内してくれた職員の呼びかけに、厩舎(きゅうしゃ)から中尾さんが馬を引いて出てきた。馬に甘えられるように何度も甘がみされて、「痛いって」と言いつつ笑顔だ。4カ月前は176センチ、93キロだったが、体重は78キロまで落ちた。まげも落としている。中尾さんはいま、馬の世話をする厩務員をしている。

 1年前、大阪で開かれる春場所の際、所属していた田子ノ浦部屋が園田競馬場(兵庫県尼崎市)に宿舎を構えた。中尾さんはそこで初めて競馬を見た。競馬場の前に「そわ鍼灸(しんきゅう)接骨院」があり、その院長が部屋のトレーナーを務めてくれた。

 院長が中尾さんら部屋の若い衆を中華料理屋に連れて行ってくれた。そこに1人の騎手も来ていた。永島太郎さん(46)。地方競馬で通算2千勝を達成した名騎手だ。院長は長年、騎手たちのケアもしており、「一緒に」と誘っていた。

 食事の後に風呂にも行った。「騎手は体重を絞らないといけない」と永島さんから苦労話を聞かされた。太らないといけない力士と正反対だったが、その努力に尊敬の念を持った。

 中尾さんは長く稀勢の里の付け人を務めてきた。横綱が土俵入りをする際には、7人の力士で綱を引っ張ってつける。「息を合わせないと締まらない。1人が抜けると難しい」。だが、19年1月に横綱が引退し、一区切りがついた。次を考え始めた時期だった。

 そのころ、永島さんも騎手を…

この記事は有料記事です。残り766文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【10/25まで】すべての有料記事が読み放題!秋トクキャンペーン実施中!詳しくはこちら