奈良県明日香村の高松塚古墳(特別史跡、7世紀末~8世紀初め)の極彩色壁画(国宝)の修理が完了した。文化庁が26日発表した。「飛鳥美人」(西壁女子群像)などで知られる壁画は1972年にみつかり、「戦後最大の考古学的発見」と話題になった。文化庁が管理してきたが、2004年にカビなどによる劣化が判明。壁画の描かれた石室ごと解体して古墳の外に取り出し、約13年間に及ぶ修理を続けるという異例の展開をたどった。
同庁によれば、修理を終えた壁画は古墳に戻さず、当分の間は古墳外の施設で管理される方針。4月から、新たな保存・公開施設の建設をめぐる具体的な議論が始まる。
04年にカビなどによる壁画の劣化が発覚後、専門家らによる調査検討会が劣化原因を調査。管理の不備や人為ミスなど複数の要因でカビの大発生を招いたと結論づけ、同庁のずさんな管理実態が明らかになった。
07年に石室を解体し、古墳近くの仮設施設で修理されてきた。紫外線などの最先端技術も駆使し、黒ずんでいた壁画の汚れは減り、色や描線もはっきりと見えるようになった。
文化庁は、壁画をいずれは古墳の中に戻す方針を堅持するが、石室内でカビの再発を防ぐ技術の確立などのめどは立っていない。(田中祐也)
揺らいだ文化庁への信頼「宝、預けたのに裏切られた」
奈良県明日香村の高松塚古墳(特別史跡、7世紀末~8世紀初め)の石室に描かれた極彩色壁画の修理が、ようやく終わった。地元住民や関係者の間には、ずさんな管理で国宝壁画の劣化を招いた文化庁への根強い不信感が残る一方、新たな保存・公開施設に対する期待の声も聞かれた。
「飛鳥美人」(西壁女子群像)などが描かれた極彩色の壁画は、1972年に奈良県立橿原(かしはら)考古学研究所(橿考研)と村による発掘調査でみつかった。石の表面に塗られた漆喰(しっくい)の上に色鮮やかに描かれ、記念切手にも採用され、考古学ブームの火付け役になった。その後、文化庁が保存対策を主導し、壁画を石室内で保存することを決めた。76年に温度や湿度を管理する保存施設をつくり、石室を密閉。壁画は非公開となった。
だが、30年余りで壁画はカ…