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知りたい民間療法(1)

 「民間療法」と聞けば、多くの人が『怪しい』『眉つば(まゆつば)』と思っているのではないでしょうか。実際、インターネットで検索してみると、予測変換においても「民間療法 危険」などと出てきます。

拡大する写真・図版グーグルで「民間療法」を検索すると?(大野智さん提供)

 その一方で、根拠が定かでない民間療法が、メディアやネットで話題となっては消え、ブームとなっては廃れ、を繰り返しているようです。事実、書店に行くと、「がんが消える食事術」「薬に頼らず××を治す」「○○を鍛えると健康になる」などといった健康本がベストセラーとして平積みされている現実に直面します。ただ、何年にも渡ってロングセラーとなっている健康本はあまり見当たらないのですが。

 どうも、世の中において民間療法は、怪しいと思われつつも気になってしかたがない存在なのかもしれません。

「最近1年間に66%が利用」の調査も

 では、実際に、どれくらいの人が民間療法を利用しているのでしょうか?

 例えば、健康食品・サプリメントは、東京都の調査で約66%の人が最近1年間に利用していると回答しています(1)。

 そのほか、厚生労働省研究班の調査でも、多種多様な施術や療法を利用している人がいることが明らかとなっています(2)。健康食品・サプリメントのほか、各種マッサージ、整体、温泉療法、アロマテラピー、漢方(処方薬以外)、鍼灸(しんきゅう)、ヨガ、カイロプラクティック、磁気療法などです。

 また、病気の人を対象とした調査においても、がん患者さんの場合では、約半数の人が民間療法を利用していることが報告されています(3)。

 これだけ多くの人が興味・関心を持っていたり、実際に利用したりしている民間療法ですが、問題点はないのでしょうか?

本人の問題だから介入すべきでない?

 これまで私は、医師として患者さんからの相談や講演会の質疑応答で、色々なケースがあることを知りました。その範囲だけでも、少なからず注意しなければならない点があることを肌で感じています。

 例えば、次のような質問や相談を実際に受けたことがあります。

 「健康食品は食品だから、どれだけ食べても大丈夫ですよね?」

 「腰痛に効くって宣伝されている健康器具、値段が高いほうが効果も高いんですか?」

 「知り合いから、今のんでいる薬をやめて、とある民間療法の専門家のところに行くように勧められてきているのですが……」

 このような疑問や不安に対して「民間療法は使う本人の問題であり、医療者が介入すべき問題ではない」と割り切る医療者もいるようです。しかし私にはできませんでした。

 そしていろいろと話を聞き、背景や原因を探っていくうちに、気づくことがありました。それは、民間療法を求める人が後を絶たないのは、健康への希求といった人間の本能に深く根ざしているからと言うだけでなく、その背景に、病院の診察室だけでは解決できない問題が山積しているからだということです。例えば、契約トラブルなどの経済的被害、薬に対する忌避などの医療不信、それをあおる一部メディアやネットの情報発信の問題、取り締まるべき行政機関の対応不備などです。

 そこで、この連載では、民間療法はそもそも本当に効くのか?(見極め方)、もし利用する場合はどのような点に気をつければよいのか?(向き合い方)について、読者の皆さんと一緒に考えていくことができればと思っています。

    ◇

 次回は4月23日ごろに配信する予定です。

[参考資料]

1)東京都福祉保健局「都民を対象とした「健康食品」の摂取に係る調査結果」[平成28(2016)年2月]

2)平成22(2010)年度厚生労働科学研究「統合医療の情報発信等の在り方に関する調査研究」(研究代表者:福井次矢聖路加国際病院院長)

参考URL:https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/about/data.html別ウインドウで開きます

3)鈴木梢ほか、緩和ケア病棟で亡くなったがん患者における補完代替医療の使用実態と家族の体験.

Palliat Care Res 12; 731-737, 2017.

大野智

大野智(おおの・さとし) 島根大学・教授

島根大学医学部附属病院臨床研究センター・教授。1971年浜松市生まれ。98年島根医科大学(現・島根大学医学部)卒。同大学第二外科(消化器外科)入局。補完代替医療や健康食品に詳しく、厚生労働省「『統合医療』情報発信サイト」の作成に取り組むほか、日本緩和医療学会ガイドライン統括委員(補完代替療法分野担当)も務める。