第1回冷戦終結でも国民は反感 ゴルバチョフ、30年前の苦悩
ゴルバチョフはいま①
3月2日の月曜日。元ソ連大統領のミハイル・ゴルバチョフは、モスクワ市内の病院から随員とともに専用車に乗り、北西部のレニングラーツキー通りに面したゴルバチョフ財団の建物に入った。ドクターストップがかからない限り、4階の執務室に姿を見せるのは通常、火曜日と木曜日だが、この日は89歳の誕生日だった。
親しい仲間や親族、職員らに囲まれ、応接用の部屋で15人ほどのパーティーが開かれた。「89」の飾りがついたバースデーケーキを囲む。ゴルバチョフは乾杯のウォッカを口にした。プレゼントは、紳士ブランド「ステットソン」の黒いソフト帽。米ソ冷戦期に核軍縮と冷戦終結へ導いたゴルバチョフと、当時のレーガン米大統領やサッチャー英首相を描いたアーチー・ブラウンの新著「ザ・ヒューマン・ファクター」も贈られた。
執務室の机には、財団宛てに送られたお祝いの手紙やはがきが山のように積まれていた。プーチン大統領からも電報が届いた。〈あなたは祖国と世界の歴史で大きな役割を果たし、今も人道的プランを体現しています〉と。
「一晩中、余韻にひたった」
反政権リベラル紙「ノーバヤ・ガゼータ」の編集長ドミトリー・ムラトフ(58)は、読者から託されたはがきの束をパーティーに持参した。リベラル系ラジオ局「モスクワのこだま」とともに、紙面やネット、ツイッターで「ゴルバチョフにはがきを送ろう」と募ったものだ。ムラトフによると全部で千通ほどあり、ゴルバチョフはすべて目を通したという。たとえば、こんなメッセージがあった。
〈ロシアが再び自由になるよ…