第1回猛反対はねのけ和牛を輸出 美食の功労者か、それとも…
追跡メイドインジャパン和牛編 プロローグ
米国で、豪州で、南アフリカで。欧州ドイツで、南米チリで。さらにはアジアのタイや中国でも……。
いま世界各地で、「Wagyu(和牛)」と称する食用牛が育てられ、市場に出回っている。
とろけるように柔らかい肉質で、日本食材の最高級品とみなされている「和牛」。
和牛の生体や精子、受精卵などの「遺伝資源」は、これまで国内で大切に守られてきた。政府も輸出規制に乗り出そうとしている。
それがなぜ世界中で育てられているのか――。
一昨年、米国で北海道の畜産農家である男性が「近代の食の歴史上において、これに匹敵する功績はない」と表彰されていた。
男性は1990年代、他の業者の猛反対を押し切って、100頭を超す和牛を米国へ輸出した。いま世界で育てられている和牛の多くは、この男性が輸出した牛の遺伝子を持つという。彼によって和牛は世界で広く認知され、現在のブームにつながったとも言える。
彼は、世界に和牛のおいしさを広め、グルメたちを満足させた功労者なのか。それとも業界にあらがい、「国の宝」を流出させた反逆者なのか――。
畜産農家の男性本人が、私たちの取材に口を開いた。
「日本製」とは何かを問う「追跡メイド・イン・ジャパン」。今回は世界に広がる和牛を追った。
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追跡メイドインジャパン和牛編
世界で和牛ブームが起こる以前に、業界の猛反対を押し切って和牛を輸出した人物がいる。彼は世界に美食を届けた功労者か。それとも…。[もっと見る]