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追跡メイドインジャパン和牛編 第1章

【第1章】功労者か、それとも…

 米南部テキサス州フォートワースは、米国有数の畜産の町だ。

 町の観光施設「ストックヤード」は、かつての畜産市場の跡地。西部劇の時代を思わせる牛追いパレードが一日2回、観光客を楽しませる。

 一昨年10月、この町で「全米Wagyu協会(AWA)」の総会が開かれた。会場の入り口には、人だかりができた。参加者のお目当ては老齢の日本人男性だった。参加者はこぞって男性と握手し、記念撮影をせがんだ。

 スタンディングオベーションの中、男性は長年の功績を表彰された。その功績は、約20年前に100頭を超える和牛を米国に輸出したことだった。

 この総会を現地取材した農と食のジャーナリスト山本謙治(49)に、米国人の和牛農家は力説したという。「彼は私たちにとって、ジョージ・ワシントンと同じようなポジションの存在だ」

 米国民が、初代大統領に比類する存在とまで称する男性とはどのような人なのか。

 我々は、男性に会うため北海道に飛んだ。

古い表彰状が並ぶ部屋で

 苫小牧市から車で海沿いに30分走ると、畜産の町である白老町に着く。町は戦前、軍用馬の産地だったが、戦後は畜産を主要産業とした。

拡大する写真・図版和牛が放牧されている武田正吾さんの牧場=2019年11月29日、北海道白老町

 海から山に向かう一本道の両側には牧草地が広がる。放牧地の中に一軒家があった。

 呼び鈴を鳴らしたが誰も出てこない。近所の人に、電話で呼んでもらうと、男性が四輪駆動車を自ら運転してやってきた。

 武田正吾、92歳。いまは一人暮らしで、160ヘクタールの牧場を営み、約400頭の和牛を育てている。

拡大する写真・図版牛舎に立つ武田正吾さん=2019年11月、北海道白老町

 「ほかの農家の反対を押し切って国外に和牛を輸出した」と聞いて、どんないかつい人かと身構えていたが、武田は穏やかなふるまいで家の中へと案内してくれた。

 部屋には、全国和牛能力共進会の表彰状が並んで飾られていた。

 武田によると、国内で「和牛五輪」と呼ばれる共進会にこれまで三度、計18頭の和牛を出し、すべて優等賞を得た。そのうち2頭が最優秀にあたる1席だったという。

拡大する写真・図版武田正吾さんの自宅に飾られている数々の賞状=2019年11月

 ただ、賞状の日付は約35年前から止まっていた。

 武田は私たちに、和牛を輸出した経緯をゆっくりと語り出した。

■「分け合う」という…

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