20歳で自死した全共闘の女子学生 何が彼女を苦しめた

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平出義明
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 大学闘争が激しかった半世紀前の討論会を伝えるドキュメンタリー映画三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」が好調だ。この政治の季節に鉄道自殺した女子学生の手記『二十歳(にじゅっさい)の原点』も当時の若者の心をとらえ、ベストセラーになった。映画が理想をめぐる言葉の応酬なら、手記は言葉による生への格闘。そこにつづられた全共闘運動や愛、孤独をめぐる「生きづらさ」は、いまも若者の魂をゆさぶり、彼女と同じ「団塊の世代」の心に青春の火をともす。

  私は慣らされる人間ではなく、創造する人間になりたい――

 そんな理想を、高野悦子は『二十歳の原点』で思い描く。1969年6月24日に20歳で亡くなった立命館大3回生のこの「心の記録」を、朗読家の春日玲さんは毎年、彼女の命日前後に、東京都内の三つの喫茶店で読み上げる。

 高野は「『独りであること』、『未熟であること』、これが私の二十歳の原点である」と日記につづった。そこには、学生運動への戸惑い、愛の苦悩、孤独といった生きづらさや、自らへの問いかけ、願いの言葉が記されている。それを春日さんは、声と体で表現する。身長152センチの高野とほぼ同じ背丈の春日さんに、高野の姿を重ねるのか、若者と団塊の世代を中心にした約30人の聴衆からすすり泣きが漏れる。

 朗読を始めて15年。聴いた人は「真っすぐな生き方だ」「理想が高い」「生きる支えになる」という感想を残す。「ぼくの分身であるように思います」という感想もあった。

 春日さんは言う。「読み継がれる本には、希望が含まれています。この本に救われたという人がいます。希望とは何かを考えてもらっています」

記事の後半で、作家の関川夏央さんが「二十歳の原点」について語ります。刊行の約20年後にこの本の評論を著しましたが、刊行当時は書店で手に取ったものの、いたましくて平台に戻したといいます。

おとなしく真面目そうな姿

 『二十歳の原点』は、高野の…

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