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 35年間未解決で、世界中の数学者を悩ませてきた数学の超難問「ABC予想」を、京都大数理解析研究所の望月新一教授(51)が証明した。2千年以上の歴史がある整数論の中で、「最も重要な未解決問題」とも言われた難題とは、どういったものだろうか。

 ABC予想は、1985年、スイスのデビッド・マッサー氏とフランスのジョゼフ・オステルレ氏により提示された整数論の難問だ。それは、a+b=cという単純な足し算から始まる。正の整数aと整数bの「和」であるcと、三つの数a、b、cそれぞれの素因数の「積」を考えた時、和と積の間に、ある特別な関係があることを示している。

 具体的にa=1、b=8で考えると、aとbの和は「1+8=9(c)」となる。次に、b=8は「2×2×2」と素因数分解できるので素因数は2。同様にc=9は「3×3」で素因数は3となる。aは1なので素因数はない。すると、a、b、cそれぞれの素因数の積は「2×3=6」となる。この場合、和であるc=9と、積である6を比べると和が積より大きい。

 だが、実は、無数にあるa、b、cの組み合わせを試すと、ほとんどで、積が和より大きくなる。ABC予想は和が積より大きくなるのはとても珍しい、ということを主張している。単純な足し算とかけ算をして大小を比較しているだけなのに、証明するのはとても難しい。

 整数は1、2、3……と無限に続く単純な数だ。だが、実は、その整数から導かれる和と積の関係は未解明の部分が多い。ABC予想は和と積の関係の根本的な部分を明らかにするもので、整数を統制する包括的な問題とされる。「ABC予想が正しければ……」と、ABC予想を前提とした研究は数多くある。影響の大きさから、いわば整数を牛耳る「番頭」のような存在なのだ。

 ABC予想はこうした影響力の大きさから、2千年以上の歴史がある整数論の中で「最も重要な未解決問題」と言われていた。

 ABC予想が証明されると、スピロ予想やフライ予想、ボイタ予想などさまざまな数学の難問が一挙に解決するとされる。証明に350年以上かかった「フェルマーの最終定理」も、ABC予想を発展させると、数ページで簡単に証明できてしまうほどだ。(石倉徹也