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 新型コロナウイルスの感染拡大で今春の選抜高校野球大会が中止となった。出場予定だった球児たちに、励ましのメッセージを届けたい。高校野球をテーマにした居酒屋を都内で営む店主が客に呼びかけたところ、250通を超えるメッセージが集まった。

 企画したのは、JR神田駅のほど近くにある居酒屋「球児園」の山川健児さん(43)。夏には関東の地方大会をはしごして観戦するほどの無類の高校野球ファンで、好きが高じて昨年3月、球児園を開店した。店内には横浜、花巻東、鹿児島実といった実力校のユニホームがずらり。知人や各校のOBから譲り受けたもので、現在保有する約140着を定期的に入れ替えて展示している。

 客同士が高校野球を通じて語り合い、世代を越えて仲良くなる。そんな光景を何度も見てきた。そして、開店1周年を迎えた時期に新型コロナウイルスの感染拡大による選抜大会の中止という事態が起きた。

 いつも自分たちを前向きな気持ちにさせてくれる球児たち。大舞台を失った心境を思うと、居ても立ってもいられなかった。「スタッフの一人が『応援メッセージはどうでしょう』と。場所柄もあって、店にはいろんな地方からもお客さんが来て頂けるので」と山川さん。すぐさま名刺サイズのカードを作り、来店客へ協力を求めた。

 すると、健大高崎(群馬)へは「機動力野球にはいつも楽しませてもらっています」。花咲徳栄(埼玉)には、「(昨夏の甲子園で敗れた)明石商に夏こそリベンジを」。鹿児島城西や帯広農(北海道)など初出場校には「夏は帰ってきて」と、4月に入った時点で約250通の温かい励ましが集まった。

 選抜大会がなくなってからも感染拡大は止まらず、状況は改善していない。高校野球の場合、東京や神奈川など各地の春季大会はほとんど中止に。お店の経営も苦しい。小池百合子都知事が外出自粛要請を出した先月25日から客足が減り、売り上げは平常時の9割減となった。

 「こんな時に営業するなんて、という声は耳にしました。でも、家賃や先月発注済みのお酒や食材の支払いもあり、運転資金を少しでも確保するためには、店を開けるしかなかったのです」と、山川さんは苦境を明かす。

 しかし、今月2日から休業。7日には東京に緊急事態宣言が出て、お店は1カ月先にどうなっているかまったくわからない。ただ、集まったメッセージは、学校側の許可がもらえれば直接届けたいという。「高校生も頑張っているので、僕も何としてでも踏みとどまりたいと思っています」と山川さん。高校野球ファンが集う場所を、守り続けたいと考えている。(山下弘展)